緩和的放射線治療普及のための好事例集
事例08
診療放射線技師&看護師からのアラート
背景
CTやMRIなどの画像検査日から検査結果の説明までは数日から1〜2週程度かかる。
その間に脊髄圧迫症状が悪化し、緊急対応のゴールデンタイムを逸することがある。
着眼点
画像検査時に直接患者に触れている診療放射線技師や看護師は臨床症状と画像をリアルタイムで確認しており、実はいち早く危険を察知しているのでは?
診療放射線技師や看護師に緊急性の高そうな緩和症例を直接連絡してもらう
ここがポイント
- 技師・看護師は患者情報と当日の状況のみでとりあえず報告
- 実際の緊急性の判断は連絡を受けた放射線治療医が行う
解説
画像検査時に、たとえば下肢のしびれや筋力低下などの脊髄圧迫症状があった場合、検査当日に患者の一番近くにいる診療放射線技師や看護師は症状に気づいていることも多いが、本当に緊急か否かの判断に迷っている間に患者は帰宅してしまう。これらの症例をリアルタイムに拾い上げする仕組みを考えた。
まず、診療放射線技師や画像検査を担当する看護師に対して、緊急性の高い患者の症状や画像所見についての勉強会を行い、どのような症例に注意してもらうか教育した。
実際に気になる症例を発見した際は、現場では当日の画像や症状などから直感のみでリアルタイムに放射線治療医に電話または院内メールで連絡してもらうこととした(パニック値報告)。
緊急性の有無については連絡を受けた放射線治療医がカルテや画像所見を確認して判断する。緊急性が高い患者については放射線治療医から主治医へ連絡し、当日診療あるいは早めの診療予約変更や緊急・早期の緩和照射検討を含めて提案。緊急性がそれほど高くなければ院内メールで連絡することとした。
これらにより、実際に緊急照射につながる症例が増加し、脊髄圧迫で歩行不能に陥る前に治療介入できた症例が増加するなどの効果がでている。
緊急性の判断を、現場ではなく、連絡を受けた放射線治療医がすることで、技師や看護師に「こんなことで連絡してもよいのか?」と迷う余地を与えず、連絡のハードルが下がり、検査のスループット低下防止にもつながった。パニック値を報告してくれた技師や看護師は、自分が連絡した患者を気にかけているので、後日経過をフィードバックして報告のモチベーションを保つようにしている。
院内連携
骨転移診療チーム
緩和ケアチーム
画像診断部門
多職種・その他
- 事例09 電子カルテを利用した骨転移簡易コンサルト
- 事例10 病院初診予約情報からの拾い上げ
- 事例11 放射線治療担当技師を通した緩和ケア科連携
- 事例12 外来化学療法センター薬剤師・看護師との連携
- 事例13 治療室を超えた認定看護師の活用