会長挨拶

三橋 紀夫

 この度、日本放射線腫瘍学会第25回学術大会を東京女子医科大学放射線腫瘍学講座が担当させていただくことになり、大変光栄なことと感謝申し上げます。これまで木曜日から土曜日までの3日間に大会が開催されてきましたが、ウィークディでは学会に参加しにくいとのご意見がありました。そこで今回は勤労感謝の日である23日(金)から25日(日)までの3日間としました。会場もアクセスの良い東京国際フォーラム(千代田区)としましたので、多くの会員に参加してもらえるものと期待しております。今回はJASTROが設立されて25周年の記念大会に当たることから、前日の22日(木)に記念式典ならびに祝賀会を開催します。

 お陰様をもちまして、学術大会には619題の一般演題を応募していただきました。シンポジウム、特別講演などの発表を含めると、演題数は670題を超え、これまでの学術大会の中で最多の演題数となりました。応募いただいたすべての演題を採択としましたが、医師のみでなく、医学物理士、診療放射線技師、看護師といったメディカルスタッフからも多くの興味ある演題が寄せられており、セッションを組むのに大変苦労しました。今回からは専門医の取得や更新のための必須講習や指導者講習会もプログラムに組み込まれています。また企業展示も40社を超える予定です。

 『がん治療の均てん化』が叫ばれ、がん診療連携拠点病院が認定されるなどがん診療の「均てん化」が図られています。とくに放射線治療には重点が置かれ、がん診療連携拠点病院として認定されるためには、放射線治療機器が整備されており、さらに放射線治療医が常勤していることが必須条件となっています。また、文部科学省ではがんプロフェショナル養成プランを開始し、放射線治療医や医学物理士の育成に本腰を入れています。こうした取り組みで確かに若い医師たちが放射線治療の道に進むようになりましたが、まだまだ需要に供給が追い付いていないのが現状です。放射線治療施設や放射線治療医の「均てん化」は、がん患者さんが自宅の近隣で標準治療を受けられるというメリットをもっていますが、放射線治療医や医学物理士の育成が間に合っていない現状では問題ではないでしょうか。放射線治療医は、患者さんの年齢を問わず様々ながんの治療に携われることが、大きな魅力であることに相違ありません。しかし、医療が高度化した現在ではすべての臓器のがん治療に精通することは不可能と言わざるを得ません。人材の供給が間に合わない現状にあっては、「均てん化」よりも「センター化」の方向に舵を切るべきではないでしょうか。今回はこの私の危惧に対する答えを出すべくメインテーマを『放射線治療の未来を創造する:「均てん化」でがん治療の多様なニーズに応えられるか』とさせていただきました。

 学術大会初日の23日(金)には第4回日・韓・中合同シンポジウムとJASTRO-ESTROワークショップがJASTROによって企画されています。第4回日・韓・中合同シンポジウムでは高精度放射線治療と化学放射線療法をテーマに24演題が3か国から発表される予定です。また、JASTRO-ESTROワークショップでは頭頸部癌、前立腺癌ならびに直腸癌に焦点を当てて治療戦略や放射線治療計画についてJASTROならびにESTROの双方から発表をいただき、3疾患に対する理解と議論を深めたいと考えています。

 最後になりますが、本学術大会の成否はご参加される皆様の熱意ある、そして真剣で積極的なご発表ならびにご討議にかかっていることは言うまでもありません。改めて、ここに皆様からの熱いご支援とご協力をお願いする次第です。東京で皆様とお目にかかれることを楽しみにしております。

日本放射線腫瘍学会第25回学術大会長
東京女子医科大学放射線腫瘍学講座
主任教授  三橋 紀夫