当番世話人挨拶

極める

この度、第32回高精度放射線外部照射部会学術大会の当番世話人として、虎ノ門ヒルズにおいて学術大会を開催させていただくことになりました。大変な重責に身の引き締まる思いでおります。

私自身は自己管理もできず咳喘息でゲホゲホしながら酩酊している身で、高精度とは程遠い生活を送り、さらに仕事では、放射線管理と患者相手のボケ漫才、エイヤっと気合で行う小線源治療、年齢を経るに従い小さな照射になっていくリンパ腫の放射線治療くらいしかやっておりません。そこで高精度放射線外部照射部会の当番世話人などおこがましくて、ご推挙いただいた会員の皆様には感謝の言葉もございません。

さて現状を突破し変革するのはいつの時代もオタクであります。オタクを「極めて」こそ新たな地平が見えてくるのです。昔、梅垣先生が頭頸部がんが治るのは見ながら治療できるからだ、食道がんは見えないから治りにくいとおっしゃっており、じゃあそれならということで放射線照射中でも腫瘍や正常組織を3次元的に可視化するMRIdianを導入しました。当初、本学術大会の標語もCaesarをまねて「見えた、治った」とするつもりだったのです。しかし、このGame-Changerと思われる装置を妄想し、構想し、実現したJim Dempsey博士は、完全なオタクで何度会社をつぶしても這い上がり、ついにViewRay社でMRIdianの開発に成功し、現在はそのリニアックバージョンを発売し、本学術大会が開催される頃には我が国でも薬機法の承認が下りていると思われます。そんなわけで、オタクを極めることこそが新たな時代と地平を切り拓くであろうことを高らかに歌い上げ、是非この学術大会で、高精度外部照射のオタクたる、「極めた」演題を発表していただければと思います。昔ある人に金平糖のような線量分布はできないかと詰め寄られたことがあります。その時はそんなのできるわけないと思っていましたが、Brahmeから始まるIMRTの流れでそのような線量分布さえ得ることが可能となりました。放射線治療の95%は外部照射です。ですからこそ外部照射では放射線治療の基盤として均てん化がうるさく言われます。この大会では均てん化も重要ですが、是非とも「突き抜けた」変な着想の話題も提供していただければと思います。

本大会の会場である虎ノ門ヒルズは、東京の新たなビジネス拠点の一つで、サラリーマン天国の新橋の盛り場も歩いてすぐです。虎ノ門ヒルズの内外で「極めた」侃々諤々の議論が展開されることをお祈りしております。

写真

当番世話人
伊丹純
国立がん研究センター中央病院
放射線治療科 科長

Return Top