JASTRO

公益社団法人日本放射線腫瘍学会

JASTRO Japanese Society for Radiation Oncology

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理事長に就任してを掲載しました。

理事長に就任して

2009年01月07日

日本放射線腫瘍学会・理事長 
平岡 真寛

 2008年12月15日、一般社団法人日本放射線腫瘍学会(以下JASTRO)が成立し、その初代理事長に選任されました。また専務理事には早川和重理事が選任されました。法人化に尽力されました多くの方々に感謝と敬意を表しますとともに、その責任の重さに身が引き締まる思いです。 JASTROを取り巻く現状認識と今後の運営に関する私の抱負を述べ、会員の皆様のご理解とご支援をお願い申し上げたいと存じます。

 時代の要請により放射線腫瘍学には嘗て無い強い追い風が吹いています。がん対策基本法の成立、その中核事業とされる厚労省のがん均てん化政策に基づくがん拠点病院の整備、文科省の人材育成プロジェクト「がんプロフェッショナル育成プラン」、いずれも放射線腫瘍医の育成、放射線腫瘍学の強化が最重点課題の一つに挙げられています。後者では、医学物理士という名称が公的文書に明記され、しかもその育成が大きな目標に掲げられるまでに至っています。この背景には、放射線治療を受ける患者が今後さらに急増することが明らかであり、迅速かつ適正に対応しなければがん治療が破綻するという危機感があります。

 これらの社会の強い期待に応える学会としてJASTROを強化し発展させることが私に課せられた最大の使命であり、以下の3つの目標を掲げ、その実現を通して責務を果たしたいと存じます。

1)放射線治療の基盤整備 2)がん治療における放射線治療のプレゼンス増大 3)グローバルな展開

 我が国の放射線治療は、設備、人材、システムいずれにおいても欧米先進国に大きく遅れをとっています。それを克服する根本は人材の育成であります。既に活働している「放射線腫瘍医増加のためのアドホック委員会」を通じたモチベーションの高い医師のリクルート、専門医に育成する教育活動、社会に認知された放射線腫瘍医専門医制度の確立という大きな流れを形成し確固たるものにすべく学会活動を強化する必要があります。特に日本医学放射線学会と連携した専門医制度の確立は今後の大きな事業であり、重点的に対応する所存です。また、健保委員会の活動を通じた保険点数の面からの支援を引き続き行い、基盤整備を推進します。

 がん治療の3本柱の一つとして放射線治療の認知度は高まっていますが、病院内外の状況を見ると外科治療、薬物療法の後塵を排しているのが多くの会員の実感だと思います。外科学会(消化器外科学会などサブスペシャリティー学会も含めて)、臨床腫瘍学会という学会の力が大きく関係しています。この学会力を決定しているのは、学会の財力、会員数、社会へのアピール力です。まずは、JASTROの財務内容を大きく改善する必要があります。現事業を維持するのが精一杯の現在の財力ではJASTROが主導する専門医制度の確立一つをとっても夢に終わる可能性があります。放射線治療が多分野の医師、医療専門職によるチーム医療にて成り立ち、それらの連携がJASTROの強化に繋がることは明白であります。しかしながら、学会力を高める根本は正会員の量的質的強化です。増加の著しい准会員については、より自立した活動を行うことが学会力の向上に繋がると考えており、関係者と協議しながらより良い関係を構築する所存です。

 グローバルな展開というと、国内の基盤整備がままならぬ中では時期尚早という意見もあるかと思います。ただ、利点も少なくありません。グローバルな展開を通じて、欧米先進国から、彼らの優れた点を学ぶことがより容易に行えます。原体照射、術中照射、高線量率小線源治療、体幹部定位放射線治療、粒子線治療と日本発の世界的な業績が数多くありますが、これらの先端医療・技術を海外へ発信し、グローバルスタンダードとして普及させることは JASTROの使命でもあります。世界の放射線腫瘍学研究ではASTRO, ESTRO,JASTROが鼎立し、JASTROを中心にアジアに一つの極を作る時期に来ていると感じています。JASTROの関連学会委員長を務めた8 年前に、中国、韓国の放射線腫瘍学会(CSRO, KOSTRO)とJASTROとの間で3カ国合同シンポジウムを開催することで合意が得られ、今までに2回のシンポジウムが開催されています。これを更に発展させ、アジアの時代を先導する役割をJASTROが担わねばなりません。学会誌については既にインパクトファクターを有する日本放射線影響学会の学会誌: Japanese Journal of Radiation Research (JRR)との統合が決定されており、国外にも開かれた学会誌としての発展が期待されています。次世代のためにもグローバルな視点でJASTROの活動を進めて行きたいと存じます。

 1988年2月に設立された任意団体JASTROは、20年間の大きな発展を経て2008年12月に法人JASTROへと成長しました。今回の法人化をJASTROの更なる発展に繋げるべく微力ながら最大限の努力をする覚悟であります。皆様のご鞭撻ご支援を心よりお願い申し上げる次第です。

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