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「京都府立医科大学附属病院放射線治療における誤照射に関する事故報告」についての日本放射線腫瘍学会の見解

「京都府立医科大学附属病院放射線治療における誤照射に関する事故報告」についての日本放射線腫瘍学会の見解

2007年03月08日

平成19年3月5日

日本放射線腫瘍学会
会長 早渕 尚文

 平成19年2月20日付け読売新聞夕刊において京都府立医科大学附属病院放射線治療の誤照射に関する報道がなされました。記事中に日本放射線腫瘍学会が同報告書を承認したと記載されておりましたが、そのような事実関係はございませんでしたので、京都府立医科大学放射線医学講座教授西村恒彦先生に事実確認いたしました。京都府立医科大学からは、そのようなコメントは行っていないとの回答があり、2月22日に西村恒彦先生から読売新聞に記事修正の申し出をしていただきました。

 日本放射線腫瘍学会の会員の皆様には事実関係を確認の上、冷静な対応を要望いたします。

 以下にこれまでの経過について述べます。
 平成19年1月13日の日本放射線腫瘍学会理事会において京都府立医科大学「放射線治療における誤照射に関する事故報告委員会」の外部委員の兵庫県立粒子線医療センター院長である菱川良夫理事より平成18年4月のリニアックの運用開始時にウエッジフイルターの設定間違いによる放射線照射事故についての A4用紙2枚の事故報告書の要旨の配布と説明がなされました。ただ、日本放射線腫瘍学会への一切の依頼はなく、理事会は事故が医学物理連絡協議会へ提出され、討論の上結論がだされた時点で客観的な判断を下すと結論付けました。従いまして、本報告書の提出もなく、検討も行っておりませんので、日本放射線腫瘍学会としては事故報告書の承認は一切行っておりません。なお、報告書はすでに京都府立医科大学から京都府を通じ厚生労働省に提出されておられるとの事です。

 放射線照射事故に関わる日本放射線腫瘍学会の見解を改めて整理したいと思います。
 日本放射線腫瘍学会あるいは物理連絡協議会は司法機関ではありませんので、医療事故に対する判定や何らかの承認をすることはできません。責任はあくまでも医療事故当事者が原則負わなければなりません。責任をとるべき医療事故当事者がすでに作製した報告書について、日本放射線腫瘍学会あるいは物理連絡協議会が是非の判断をするということもありえません。
 一般に公表すべき医療事故は、(1)「死亡あるいは重篤な障害が明らかに当該医療事故によるもの」(2)「公表が医療事故防止につながるもの」であり、公表するか否かの判断は責任を負うべき医療事故当事者が行うもの、とされています。

 しかし、緩和的治療も対象とする放射線治療における医療事故では、死因が明白に当該医療事故によるものでないと判断されても、社会的には納得されがたい場合があるのも事実です。従って、第3者しかも放射線の専門家を加えて検討し判断を得た方が、社会的に納得されやすいと考えられます。放射線腫瘍医のみならず、放射線治療専門技師、医学物理士などの多職種の専門家で構成される物理連絡協議会はその点で最も理想的な第3者であると考えております。また、同協議会を加えることによりわが国における放射線照射事故に対する見解や対策が一貫してなされることができます。一方、日本放射線腫瘍学会は大局的かつ学際的に医療事故防止を指導する立場にあると思います。今後の対応として、医療事故当事者の判断によりますが、放射線治療における医療事故で死亡あるいは重篤な障害が発生した場合には、当該医療事故によるあるいはよらないにかかわらず、物理連絡協議会にまず報告し、その後の対応を相談することが望ましいと考えます。また、日本放射線腫瘍学会に対しても、その後の事故防止の指導のために報告をしていただくことが望ましいと考えております。

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