No.159
TURP後の前立腺癌に対する外照射:泌尿器系の急性期および晩期有害事象についての報告
External Beam Radiation Therapy After Transurethral Resection of the Prostate: A Report on Acute and Late Genitourinary Toxicity.
Devisetty K, Zorn KC, Katz MH, et al.
Int J Radiat Oncol Biol Phys. Dec:30-30, 2009
目的
経尿道的前立腺切除(transurethral resection of the prostate: TURP)施行の既往が外照射後の急性期、晩期有害事象発症に影響するか否かは議論のあるところである。IMRT あるいは3DCRTで照射された比較的最近の前立腺癌患者においてTURPの既往が泌尿器系有害事象に及ぼす影響について後方視的に検討。
方法
1988-2005年に根治的外照射(総線量中央値: 72Gy, IMRT: 45%, 治療開始時のCTVは前立腺+精嚢近位が基本, PTVはCTV+1 cm, 後方のみ0.6cm、直腸V70<25%, 膀胱V70<35%が目標)を受けた転移のない前立腺癌患者609例(TURPの既往あり:71例、TURPの既往なし:538例)が対象。
ホルモン治療(ADT)は55%で中央値4ヶ月併用。
エンドポイントはG3以上の急性期および晩期泌尿器系有害事象。TURPの既往がある71症例における有害事象発症に関する因子、全症例における有害事象発症に影響する因子などについて検討。経過観察期間の中央値はTURP歴あり群で40カ月、TURP歴なし群で50カ月であった。
結果
(1)TURPの既往ありvs. TURPの既往なしの患者背景の違い患者背景については年齢のみ有意差を認めた(TURP(+)72 years vs. TURP(-)69yearsp = 0.0013) 。T stage, N stage, Gleason score, 前立腺体積、治療前PSA、リスク分類、治療前IPSSについては有意差なし。治療関連因子としては総線量(TURP(+)70Gy vs. TURP(-) 72Gy, p < 0.0001)、IMRTを用いた割合(TURP(+)31% vs.TURP(-) 47%, p=0.0123)、ADTを併用した割合(TURP(+)70%vs. TURP(-) 53%, p =0.059)に有意差を認めた。IMRTを用いた症例では総線量が高くなっているためと思われる。
(2)TURP群71症例における急性期>=G2発症に影響した因子(G3以上の症例は少いため)TURPの回数のみ有意(1回 vs. 2回以上 p = 0.0036)。その他の因子(切除された前立腺体積、EBRTまでの期間、治療開始前IPSS15以上、総線量74 Gy≦、IMRT、全骨盤照射、ADT、治療年代)は影響せず。
(3)TURP群での晩期>=G3に影響した因子G3以上の有害事象を発症したのは5人(失禁1例、血尿3例、尿閉2例)。単変量解析ではADTのみ有意で、4年障害非発症率がADT(+) vs. (-)で45 % vs. 95%(p = 0.0024)。最終経過観察時点までに有 害事象は軽快傾向にあり、治療前と最終フォローアップ時のIPSSスコアを比較しても増悪はなし(p = 0.6911)。
(4)全体で急性期・晩期有害事象発症に影響した因子急性期>=G3はTURPのみが有意(TURP+vs. TURP -で7 % vs. 2 %, p = 0.0252)。晩期>=G3は単変量解析、多変量解析でTURPのみが有意。多変量解析を操作するとTURPと総線量74Gy以上にw)傾向あり。
結論
TURP後に外照射を受けた前立腺癌患者ではG3以上の泌尿器系有害事象を発症するリスクが高くなる。しかし、その頻度は低く、また毒性は持続しない傾向にある。
コメント
晩期有害事象の多くは血尿であり、尿失禁(sphincterへの影響)はここでは問題とならないとしている。high-dose to small volumeの影響が示唆されるが、治療前のTURPや線量の影響は直感的にわかりやすい。無用な多変量解析は読む手間を増やす。泌尿器系に限らないがFiorino Cらの総説Dose-volume effects for normaltissues in external radiotherapy: Pelvis (Radiother Oncol 2009;93:153-167)もできればご一読を。
(千葉大学 渡辺 未歩、宇野 隆)