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No.161
局所進行性頭頸部癌における同時併用化学放射線療法とTPF導入化学療法を加えた同

Concomitant chemoradiotherapy versus induction docetaxel, cisplatin and 5fluorouracil (TPF) followed by concomitant chemoradiotherapy in locally advanced head and neck camcer: a phase II randomized study

Paccagnella A, Ghi MG, Loreggian L,et al.
Annals of Oncology, published online December 23, 2009

背景

同時併用化学療法(CCRT)は局所進行性頭頸部扁平上皮癌(SCCHN)に対する標準治療である。CCRT前にdocetaxel, cisplatin, 5-fluorouracil (TPF)を用いた導入化学療法を施行する群とCCRT単独で治療する群で治療効果を評価した。

対象と方法

手術不能と判断されたStageⅢ-ⅣのSCCHN患者でPS 0-1の患者を対象。

(arm A: CCRT 単独)
cisplatin 20mg/m2(day1-4), 5-FU 800mg/ m2/ 96 h(RTの1・6週目に2コース施行)放射線治療は原発巣に70Gy(2Gy/日、週5回)、頸部には最低50Gy(2Gy/日、週5回)照射を行った。

(arm B: Induction TPFを3コース後 にCCRT)
TPF: docetaxel 75mg/m2(day1), cisplatin 80mg/m2(day1), 5-FU 800mg/m2/96 h を3週毎に3コース施行。CRTはarm Aと同様。

Primary end pointはCCRT施行6-8週間後での画像的CR率(RECISTで評価)。Secondaryend pointはoverall survival(OS)、progression-free survival(PFS)。

結果

2003年1月から2006年1月にランダム化試験に登録された101例を対象とし、Arm Aは51例、Arm Bは50例。
CR率は、Arm Aで21.2%に対し、Arm Bは50%(P=0.004)であり、Induction TPFを施行した群で良好な結果であった。
Median PFSはArm A:19.7ヵ月、Arm B:30.4ヵ月。
2年PFSはArm A:44.7%、Arm B:55.6%(P=0.187)。
Median OSはArm A:33.3ヵ月、Arm B:39.6ヵ月。
2年OSはArm A:57.1%、Arm B:61.0%(P=0.268)。
PFS・OSともに有意差を認めなかったもののInduction TPFを施行した群で成績良好ではあった。
TPF療法中に52%でgrade3-4の好中球減少を認め、grade3-4の脱毛・粘膜炎をそれぞれ18%・6%認めた。CCRT中の急性毒性はArm A、Arm Bともに大きさ差は認めなかった。
TPF3コースの完遂率は96%(49例中47例)で、2例はTPF2コースのみ。7例はTPF後のCCRTを全く施行しなかった。CCRTの完遂率はArm Aで91.8%(49例中45例)、Arm Bで93%(43例中40例)。CCRT中の3日以上の照射休止はArm Aで49例中16例、Arm Bで43例中17例。

結論

CRT前のInduction TPFが局所進行SCCHN患者に高いCR率と関連性があった。

コメント

頭頸部扁平上皮癌に対するRT前のInduction chemotherapyとして TPF療法がFP療法より全生存率・無増悪生存率・局所制御率に有意差を持って成績良好とEORTC24971/TAX323やTAX324で報告されている。このようにInduction TPFの有用性が示されてはいるものの、上記の比較はあくまでinduction chemotherapyとして、FP療法よりTPF療法が優れていると報告しているのみである(Induction TPF後の治療は、EORTC24971/TAX323はRT単独、TAX324ではweekly carboplatinを用いたConcurrent CRT)。

今回の報告では、手術不能SCCHNの一般的治療と思われるCDDPと5-FUを併用したCCRT単独と、これにInduction TPFを加えた群で比較し、Induction TPF自体の有用性を検討している。今回の報告では、全生存率や無増悪生存率で両群に明らかな有意差を認めなかったが(Arm Bでは7例がCCRTを全く施行されていない影響もあると思われる)、CR率はInduction TPFを用いた群が良好な結果を認めており、今後の結果が期待される。

Induction TPFがSCCHNの標準的治療となるようであれば、IMRTが普及している現在において、Induction TPF後の放射線治療におけるdelineationや投与線量も今後の課題になってくるのではないだろうか。


(東北大・梅澤 玲)

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