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No.141
局所進行前立腺癌に対するホルモン療法±放射線治療についてのランダム化比較試験(SPCG-7/SFUO-3)

Endocrine treatment, with or without radiotherapy, in locally advanced prostate cancer (SPCG-7/SFUO-3): an open randomised phase III trial.

Widmark A, Klepp O, Solberg A, et al.
Lancet 373(9660):301-308, 2009

背景

いくつかの臨床試験によって、高リスク前立腺癌に対するホルモン療法と放射線治療の併用の有効性が証明されている。今回は、放射線治療の有効性を評価するため、ホルモン療法±放射線治療(増悪するまでホルモン治療は継続)を比較する第 相試験を行った。

方法

1996年2月から2002年12月の間に、ノルウェー、スウェーデン、デンマークの47施設から登録が行われ、875例の局所進行前立腺癌(T3;78%; PSA<70; N0; M0)が、ホルモン治療単独群(439例)とホルモン療法+放射線治療併用群(436例)に無作為割付された。

対象は、76歳以下でPSが良好であり、10年以上の生存が期待される患者とされた。ホルモン療法は、3ヶ月間のtotal androgen blockage(TAB)の後、増悪を認めるまでflutamideが投与された。放射線治療は、3ヶ月間のTABの後から開始され、70Gy以上の線量が前立腺に照射された。
Primary endpointは前立腺癌特異生存率とし、ITT解析が行われた。

結果

経過観察期間中央値7.6年では、ホルモン療法単独群の79例と、放射線治療併用群の37例が前立腺癌で死亡した。10年間の累積前立腺癌特異死亡率は、ホルモン療法単独群で23.9%であったのに対し、放射線治療併用群では11.9%であり(difference 12.0%、95% CI4.9-19.1%)、相対リスクは0.44 (0.30-0.66)であった。10年間の累積全死亡率はホルモン療法単独群で39.4%、放射線治療併用群では29.6%であり(difference 9.8%、95% CI 0.8-18.8%)、相対リスクは0.68(0.52-0.89)であった。

10年累積PSA再発率は、ホルモン療法単独群で有意に高かった(74.7% vs 25.9%、p<0.0001;HR 0.16; 0.12-0.20)。5年後の排尿、直腸、性機能障害は放射線併用群でやや多かった。

結論

局所進行/高リスク前立腺癌において、ホルモン治療に局所の放射線治療を加えることによって、ホルモン治療単独と比較して10年前立腺癌特異死亡率が改善し、さらに全死亡率も低下し、照射併用による副作用は許容範囲と考えられた。これらのデータより、ホルモン療法に放射線治療を加えることを新たな標準とすべきである。

コメント

2008年のASTROのplenary sessionで報告された結果について論文化したものである。これまでの局所進行前立腺癌の臨床試験では、放射線治療にホルモン治療を加えたことによるメリットについて報告されていたが、ホルモン療法に局所への放射線治療を加えるか、加えないかのランダム化比較試験は初めてであり、試験を完遂させ、統計学的に放射線治療併用の有効性を示した価値のある報告である。

わが国においても、若年者であっても、前立腺癌の根治治療としてホルモン療法単独治療が選択されていることもいまだに多く、今回の結果は、実臨床にも広く取り入れられるべきであり、泌尿器科医との十分な議論が必要であるだろう。


(国立がんセンター中央病院 師田 まどか)

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