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No.60
局所進行子宮頸癌に対する化学放射線治療:RTOG 90-01データの最新版

Pelvic irradiation with concurrent chemotherapy versus pelvic and para-aortic irradiation for high-risk cervical cancer: An update of Radiation Therapy Oncology Group Trial (RTOG) 90-01

PJ Eifel, et al.
J Clin Oncol 22:872-880, 2004

局所進行子宮頸癌に対する標準治療は,米国ではシスプラチンを含む化学療法と放射線治療の同時併用療法となっており,日本でも本治療法が採用されるようになってきている.
その根拠となっているのは,1999年-2000年に相次いで報告された5つの第III相臨床試験の結果である.ただしGOG-85を除くと観察期間の中央値は3年数か月であり,再発形式や正常組織の晩期有害事象に関する解析は不十分なものであった.本論文は1999年にNEJMに掲載されたRTOG 90-01のデータを更新したものであり,進行子宮頸癌に対する化学放射線治療と放射線単独治療の比較試験の長期観察結果について報告している.

対象と方法

Stage IIB-IVA,およびStage IB-IIAで腫瘍径5 cm以上ないしは生検にて骨盤リンパ節陽性の子宮頸癌403症例を,化学放射線治療群と放射線単独治療群の2群に無作為に割り付けた.化学放射線治療群では,放射線治療(全骨盤照射45Gy/25Fr+2回の低線量率腔内照射)と化学療法(CDDP 75mg/m2 + 5FU 1000mg/m2x4,3週毎に3コース)を同時併用した.放射線単独治療群では全骨盤と傍大動脈リンパ節領域の拡大照射野への45Gy/25Frの外部照射と2回の腔内照射を行った.

結果

観察期間の中央値は4.6年(生存者で6.6年)であった.治療効果を比較すると,化学放射線治療群の方が放射線単独治療群に比して有為に良好であった(5年OS: 73% v 52%, DFS: 68% v 43%, Loco-regional Failure: 18% v 34%, いずれもp<0.0001, Distant Meta.: 18% v 31%, p=0.0013).化学放射線治療は再発の危険率を51%減少させた.病期別にみるとStage IB-IIでは化学放射線治療の方が放射線単独に比較してOS, DFS, Loco-regional Controlは有為に良好であった(5年OS: 79% v 55%, p<0.0001).一方Stage III-IVAでは化学放射線治療の方がDFSは有意に良好であったが,OSおよびLoco-regional Controlに関しては良好な傾向にあるものの有意差は認められなかった(5年OS: 59% v 45%, p=0.07).正常組織の晩期有害事象に関しては,Grade 3以上の5年累積発生率は両群ともに14%で, 両群間に差はなかった.

結論

長期観察の結果,進行子宮頸癌に対してCDDP+5FUによる化学療法と放射線治療の同時併用によって,晩期有害事象を増加することなく予後の明らかな改善が得られた.

コメント

進行子宮頸癌に対する化学放射線治療に関するRCTの報告である.III-IVA期では効果は劣ってくるものの,全般的にいって進行症例に対する化学療法の同時併用は有効と判断される結果である.ただし患者の背景(年齢,PS等)や放射線治療方法が米国と日本とでは異なるため,日本でも臨床試験を行う必要があると考えられる.また晩期有害事象に差はなかったが,Grade 3以上(手術を要する障害)の発生率は,日本の現行の放射線治療でのそれに比して高く,容認できる数値であるかは議論を要する.


(加藤 真吾)

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