JASTRO

公益社団法人日本放射線腫瘍学会

JASTRO Japanese Society for Radiation Oncology

ホーム > JASTRO 日本放射線腫瘍学会(医療関係者向け) > 学会誌・刊行物 > Journal Club > 放射線治療のQAのためのStatistical Process Control

No.76
放射線治療のQAのためのStatistical Process Control

Statistical process control for radiotherapy quality assurance

Todd Pawlickia, Matthew Whitaker, Arthur L. Boyer
Med. Phys. 32(9):2778-2786, 2005

目的

放射線治療に関すあらゆるQAとは、ランダムエラーとシステマティックエラーを明らかにすることである。これらのエラーは、多くの小さなランダムエラーと、頻度は少ないが結果を左右する大きなエラーとで成り立っている。これらを区別すれば主要なエラーの原因を効率的に明らかにできるが、実際のQAではこれら2つはじゅうぶんに区別されていない。例えば、出力測定において±×%の結果は得られるが、それが出力の変動であるか人為的なエラーかの判断と処理は難しい。そこでStatistical Process control(SPC)を放射線治療QAに適用することによりランダムエラーとシステマティックエラーを区別することが目的である。

方法、結果

パイロットスタディとして、10MV X線の1日の出力線量、平坦度・対称性について、実際の症例において52日間の測定・検討を行った。Process behavior chartsを用いて計算を行い、ランダムエラーのみのエラー群(正規分布となる群、誤差の平均が0で1つの標準偏差で表されるもの)とランダムエラーとシステマテマティックエラーの2つを含むデータ群の解析を行った。そしてProcess behavior chartsによって設定されたlimitsを超えた場合には、システマティックエラーを取り除く作業を行う。毎日のQAの中でProcess behavior chartによるLimitsを用い判断することで、システマティックエラーの修正が可能であることわかった。これに対して、同じシステマシックエラーを含む群においても標準偏差を用いた方法ではエラーを認識できなかった。Process behavior chartを用いて測定データから計算された場合2%の変化を検出したが、標準偏差による計算では変化を認めなかった。

考察

ここで提示された技法はSPCツールにおいてはもっともシンプルなものであるが、客観的で定量的なProcess behavior chartsを適切に用いることでQAに関するエラーの検討が可能となる。使用には知識と経験が必要であるが、この方法によりQA管理上におけるふたつの誤り、すなわち問題(誤差)が生じた時の無行動と問題が生じないときの行動とを是正するものとなる。

コメント

Statistical Process Control(SPC)とは、モニタリングの方法の一つであって、統計分析を通してプロセスを制御し理想的な改善を目的とする。それには以下の4つのステップがある。
1)プロセスを測って、2)それを整合的にするためにプロセスにおいて相違を除いて、3)プロセスをモニターして、4)その最高の目標値までプロセスを改善する。
外部照射装置の品質管理項目にはそれぞれに許容誤差が示されている。そのエラーは通常はばらつき(標準偏差や変動係数)で評価を行い調整をするべきか判断をしている。しかしそれがランダムなものかシステマティックな誤差であるかの判断は難しい。本論文は、その方法の一つとしてSPC手法の一つであるProcess behavior chartを用いて判断する報告であった。QAにおける統合的判断や改善の一助となると思われる。


(奥村 雅彦)

top