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公益社団法人日本放射線腫瘍学会

JASTRO Japanese Society for Radiation Oncology

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No.42
骨転移による疼痛

Bone Cancer Pain

Clohisy DR, Mantyh PW
Cancer 97(S3):866-873, 2003

背景

骨転移の痛みは大変一般的であるが、この種の痛みは治療が難しい。実験モデルの開発は、悪性腫瘍患者の疼痛発現機序を理解するのに重要である。

方法

骨癌のマウスモデルを研究した。腫瘍による骨破壊の程度、痛み、末梢と中枢神経系の神経化学的特徴の複合的解析が、骨腫瘍による痛みの研究のために行われた。病気による骨破壊はレントゲン検査と組織形態学により評価した。痛みは自然の行動により判定し、神経化学解析は免疫組織化学による hyperalgesic peptidesと神経化学マーカーを含んでいる。

結果

大腿部に肉腫のあるマウスは、痛みの程度を測定できる行動と神経化学変化を示した。悪性骨病変による痛みは、炎症や神経疾患の痛みとは、神経化学的に全く異なっていた。実験的事実から、病気による骨溶解と腫瘍の両者が、痛みを引き起こすのに関与し、末梢と中枢神経系の両者の感受性が亢進していることが分かった。

結論

悪性骨病変は神経系の感受性亢進を含めた特有な痛みの状態を作る。骨組織において痛みに強く関与するものは、破骨細胞性骨吸収と悪性病変そのものである。

骨転移による疼痛緩和に放射線療法が頻用され有用である。しかし、骨転移の疼痛発生機序は未だに全く不明である。最近、マウスを用いた実験モデルが作成され、骨転移の痛みは末梢・中枢神経を含めた系で、組織化学的にも検討されている。本論文は骨転移による痛みの原因究明と対策の、現状における総説のようなものである。


(伊東 久夫)

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