No.49
照射野内の歯科修復金属からの散乱線遮蔽装置の評価
Evaluation of a device for attenuation of electron release from dental restorations in a therapeutic radiation field
Reitemeier B, et al.
J Prosthet Dent 87:323-327, 2002
皆さんは口腔近辺の放射線治療の際に、修復歯に使用している金属はどのようにしているだろうか? 我々の施設では、照射野内の金冠は原則抜去する、としてきたが、その必要はあるのだろうか? 高エネルギーX(ガンマ)線治療で照射野内に高密度、高原子番号の金属があると、近傍では散乱線による線量の増加、減衰による線量の低下が予想される。本論文では、ファントム実験、モンテカルロシミュレーションによる検討を行っている。
目的
4種の歯科用物質の治療照射による吸収の程度と後方散乱の影響について測定した。保護ステントの効果についても述べる。
方法
線量分布による4種(金主体の合金、純粋チタン、アマルガム(水銀と他の金属の合金) と合成物質)の物質の影響を歯を含む2つのテストモデルで測定した。
Alanine線量計を用いて保護ステント使用/不使用の比較をした。結果の確認のために、テストモデルの一つについてシミュレーションと比較した。
結果
歯科用物質表面での後方散乱の影響は、物質の存在しない測定線量と比較し170%の増加があった。線量増加率は歯科用物質の原子番号と共に増加した。後方散乱の影響の広がりは、最大4mmであった。
結論
この研究で明らかにされたように、170%という無視できない線量増加を防ぐために歯科修復金属周囲の軟組織を放射線から保護すべきであろう。後方散乱の結果から、軟組織は3mmの合成ステントによって効果的に保護する事ができるといえる。
コメント
歯科用金属の影響についてはかなり以前より議論されてきたが、この論文では特に後方散乱の影響について原子番号との関連、距離による変化などを明らかにしている。検討しているのは比較的単純なファントムに1方向から照射した場合であるが、他の論文からすると人体モデルでも大差ないようである。ただし、対向で照射すると、金属による減衰の効果からこの後方散乱の影響は若干少なくなる。ちなみにFig. 2を参照するとわかるように、前方散乱の影響はほとんどなく、減衰の影響が多少ある。なお、我々(慶應大学)も関連の実験をしており、次回のJASTRO 大会で発表する予定である。
(国枝 悦夫)