JASTRO

公益社団法人日本放射線腫瘍学会

JASTRO Japanese Society for Radiation Oncology

ホーム > JASTRO 日本放射線腫瘍学会(医療関係者向け) > 学会誌・刊行物 > Journal Club > 乳癌におけるセンチネルリンパ節生検と標準的腋窩リンパ節郭清の無作為比較試験

No.50
乳癌におけるセンチネルリンパ節生検と標準的腋窩リンパ節郭清の無作為比較試験

A randomized comparison of sentinel-node biopsy with routine axillary dissection in breast cancer.

Veronesi U, et al.
N Engl J Med 349:546-553, 2003

背景

センチネルリンパ節生検が、乳癌における腋窩リンパ節の転移状況の正確な予測法となりうることを多くの研究が示してきたが、センチネルリンパ節生検の臨床的な有用性と安全性の検証が必要である。

方法

1998年3月から1999年12月までに、2cm以下の大きさの原発性乳癌患者516人を、はじめからセンチネルリンパ節を含めて腋窩郭清を施行した群(郭清群)と、まずセンチネルリンパ節郭清を行い、リンパ節転移陽性の場合のみに腋窩郭清を行った群(センチネル群)に分ける無作為比較試験を行った。

結果

両群で見つかったセンチネルリンパ節の数は同じであった。郭清群257人中83人でセンチネルリンパ節が陽性であった。(32.3%)、一方でセンチネル群259人中92人でセンチネルリンパ節陽性であった(35.5%)。郭清群でセンチネルリンパ節の精度は96.9%、感度は91.2%、特異度は100%であった。センチネルリンパ節生検のみを行った患者では、腋窩郭清を行った患者に比べて、疼痛も少なく腕の運動制限も少なかった。乳癌の転移や再発事象(event)は郭清群に15事象(例)、センチネル群に10事象(例)認められた。腋窩郭清を施行しなかった167人中、経過観察中に腋窩転移を認めた患者はいなかった。

結論

初期乳癌患者の腋窩リンパ節転移のスクリーニング法としてセンチネルリンパ節生検は安全で正確な方法である。

乳癌におけるセンチネルリンパ節生検の診断的価値が無作為試験で評価され、その精度、感度および特異度の高さが示された。センチネルリンパ節に転移がなければ腋窩リンパ節郭清は回避できる可能性が高い。


(茂松 直之)

top