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公益社団法人日本放射線腫瘍学会

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No.52
早期前立腺癌:治療法の選択

Early prostate cancer: clinical decision-making

Jani AB, Hellman S.
Lancet 361:1045-1053, 2003

この論文は早期の前立腺癌に対する治療について、4つの治療法(経過観察、手術、体外照射、小線源治療)について利点と欠点を示しながらレビューした論文である。

経過観察という選択は、高齢、低グレードで患者自身の予後が限定されている場合に成立する。根治手術は、皮膜外進展、精嚢およびその他の構造物に対する進展を評価でき、高グレード群ではアジュバントとして放射線治療を追加できるという利点を持つが、これが生存期間の延長に寄与するという報告はない。欠点は膀胱と尿道を縫合するために2-5%の患者に術後に重篤な尿閉を生じ、インポテンツが生じる可能性が高いことである。直腸の副作用は無視できる。体外照射は、強度変調照射を初めとする技術革新によって副作用を抑えて線量を増加することが可能となり、生存率では手術と同等となった。この利点は、非侵襲的で麻酔のリスクがなく、排尿に関する副作用が少ないこと、インポテンツのリスクが少ないことである。直腸の重篤な晩期の副作用は1~2%の患者に生じ、この率は小線源治療の場合より高い。小線源治療は現在では手術、外照射と同等の成績で、その利点はより絞った照射が可能で、直腸、インポテンツの副作用を軽減できる点である。欠点は前立腺浮腫からくる尿閉、頻尿で、ホルモン療法によりあらかじめ腫瘍を縮小させておくと良いかもしれない。治療成績の数字上の差の主たる原因は患者選択によるものであり、治療効果についてはどの治療法もほぼ同等であり、異なるのは副作用の様式であるとしている。比較試験を施行するためには長期の観察、評価方法を一定化する必要があり、現在のところ治療間の比較試験はなされていない。治療法の選択は病期の因子と患者因子とを勘案して決定するものとしている。

この論文では早期を明確に定義していないが、それぞれの治療法の特徴を簡潔に記している。早期の前立腺癌には有効な治療法が多々あるため、今後はその棲み分けが必要となろう。陽子線治療について何一つ触れていない点は残念である。


(徳植 公一)

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