No.56
咽頭壁の扁平上皮癌に対する根治的もしくは頚部廓清を組み合わせた放射線治療
Definitive radiotherapy alone or combined with a planned neck dissection for squamous cell carcinoma of the pharyngeal wall.
Hull MC, et al.
Cancer 98:2224-2231, 2003
1964~2000年にフロリダ大学で咽頭壁に生じた扁平上皮癌の根治的放射線治療が行われた症例を対象に制御率、生存率に関わる因子を検討した報告である。1964~2000年に148人に対して根治的放射線治療が行われ、すべての患者は最低2年の経過観察が行われた。 5年局所及び最終局所制御率は、T1は93%、93%、T2は82%、87%、T3は59%、61%、T4は50%、50%であった。多変量解析では、1日2回の多分割照射法(p=0.0009)、AJCC StageI-II(p=0.0051)、中咽頭原発(p=0.0193)が、局所領域制御の改善に有意であった。5年絶対及び原病生存率は、StageI 56%、89%、Stage II 52%、88%、StageIII 24%、44%、StageIV 22%、34%で、全体ではそれぞれ30%、49%であった。8人の患者(5%)が有害事象によって死亡した。以上から、局所領域制御及び生存率は部位、病変の範囲、照射様式に関わることが示された。治療成績は近年改善されてきてはいるが、治療による有害事象は今回の検討で明らかであり、二次癌によって死亡する患者の割合が多かった。
この論文では死亡に至った重篤な有害事象はaspiration pneumonia 4人、softtissue/cartilage necrosis 3人、laryngeal edema 1人で、死亡には至らない有害事象は23人に生じたと報告しており、症例数の割に多い印象を受ける。多分割照射法施行の影響と思われるが、長期間の割に症例数が少ないのでそれ以上の検討は難しいのかもしれない。
(藤田 實)