No.59
進行喉頭癌の喉頭温存を目的とした化学放射線同時併用療法
Concurrent chemotherapy and radiotherapy for organ preservation in advanced laryngeal cancer.
AA Forastiere, et al.
N Engl J Med 349:2091-2098, 2003
局所進行喉頭癌にはシスプラチンと5FUの化学療法と放射線療法を併用することが、手術に代わる治療として広く受け入れられている。しかし、化学療法を併用する意義や併用のタイミングは不明である。この研究はこれらの点を明らかにするため行われた。
対象は547例のT2-4(手術不能な程大きなT4は除く)で、エンドポイントは喉頭の保持とした。患者は(1)CDDP(100mg/m2)+5FU(1000mg/m2 X 5days)を3週毎に3コース後、放射線治療70Gy、(2)CDDP+5FUと放射線を同時併用、(3)放射線療法単独、の3群に分けた。喉頭摘出は(1)化療先行群(1群)は2コース終了後評価し、効果が認められない場合、(2)その他の群は放射線療法終了後、腫瘍の残存あるいは再発した場合、に行われた。
観察期間中央値3.8年で、喉頭温存率は2群が88%となり、1群の75%や3群の70%より有意に良好であった。局所制御率も2群は78%で、1群の61%、3群の56%より有意に良好であった。1,2群の化療併用群は照射単独群に比べて遠隔転移も有意に少なく、無病生存率は良好であった。しかし、粗生存率は3群の間に違いを認めなかった(5年粗生存率1群55%、2群54%、3群56%、5年無病生存率1群38%、2群36%、3群27%)。高度の有害事象の発生は、化学療法を用いた群で多くなった(1群91%、2群82%、3群61%)。
また、粘膜の有害事象の発生は2群が他群の約2倍となった。
喉頭癌ではCDDP+5FUと放射線の同時併用が、化療後放射線療法あるいは放射線療法単独に比べて、局所制御と喉頭温存で優れていた。
化学放射線同時併用群は局所制御が良好で遠隔転移も減少したが、生存率は改善しなかった。この理由について、本論文中には述べられていない。
本論文には論評がついており、生存率が改善しなかった原因として、(1)進行頭頚部癌患者は他の癌を発生しやすいこと、(2)心血管・肺の疾患を発生しやすいこと、等によるのではないかと推測している。そして、タバコが原因とされる癌の生存率の改善には、単に癌の治療だけでなく、この2点を改善する方法を講じる必要があるとしている。
(伊東 久夫)