No.69
ホスピスにおける姑息照射の実態調査
Survey on Use of Palliative Radiotherapy in Hospice Care
Stephen Lutz, et al
J Clin Oncol 22:3581-3586, 2004
目的
ホスピス入所患者が姑息的放射線治療をうけることを制限する因子を明らかにすること、そして放射線治療医とホスピス職員とが、教育、研究、患者の支持に関して将来的に協力する方向を提案すること。米国ではホスピス入所者の 51% が悪性腫瘍患者である。しかし主に費用の点から放射線治療が症状緩和に活躍できないという現実がある。
方法
米国国立ホスピス・緩和医療組織(NHPCO: National Hospice and Palliative Care Organization)と ASTRO が協力して、ホスピス職員を対象に、ホスピス入所中の悪性腫瘍患者に対する放射線治療に関する意識のアンケート調査を行った。調査は NHPCO のすべての会員を対象に行われた。
結果
19項目からなるアンケートは 1800以上の施設に配られ、480施設から回答があった。その結果、87% の職員が放射線治療は姑息治療として重要であると答え、94% は姑息照射に関する治療医の講義を希望していた。また、回答の75% では放射線治療施設との関連があって紹介可能とのことであった。しかし回答者の56% は放射線治療医がホスピスでの緩和医療としての放射線治療に習熟していないと感じており、76% は「放射線治療医は1回照射を嫌がる。」と回答していた。また、2002年に実際に放射線治療を受けた患者は、ホスピス入所患者のわずかに 3% 以下であった。その妨げとなっているのは、費用、搬送の困難さ、短い生命予後、およびホスピス職員と放射線治療医師との教育の違いであった。
結論
ホスピス入所患者の終末期を改善するために放射線治療を活用するべきだが、いくつかの障害がある。お互いの教育という点でASTRO と NHPCO の協力が必要である。
コメント
緩和医療を進めるために、以下の点が強調されている。
1. 現状のホスピスの予算では、放射線治療医は分割照射(約2000ドル必要)よりも1回照射(約630ドル必要)も考慮すべき。
2. ホスピス職員は放射線治療に対する理解を深めること。
3. 放射線治療医とホスピス職員の協力が必要。
一方「ホスピス入所患者に対する放射線治療の妨げとなっているものは何か。」に対する回答のなかで、上記「費用」と「教育」以外にも、「合併症があるから (31%)」「本人が嫌がるから (25%)」「家族が嫌がるから (21%)」「放射線治療施設と連携がない (10%)」「放射線治療は効かない(9%)」などがあるのは興味深い。
米国と違い日本では放射線治療施設がそれほどセンター化していないため、「放射線治療施設のようなホスピスのような病院」という側面もある上に、費用の点であまり心配がないのは大きな長所と思う。
(近畿大・岡嶋 馨)