No.87
原発性肝癌に対する三次元放射線治療における放射線性肝障害:危険因子と肝の放射線耐性
Radiation-induced liver disease in three-dimensional conformal radiation therapy for primary liver carcinoma
Liang SX, Zhu XD, Xu ZY, et al.
Int J Radiat Oncol Biol Phys. Jun 1;65(2):426-434, 2006
目的
放射線性肝障害(RILD)に関連する危険因子を同定して、放射線に関する肝の耐容性を明らかにする。
材料と方法
hypofractionでの三次元放射線治療(3DCRT)を受けた109名の原発性肝癌(PLC)のデータを分析した。そのなかでは RILDと診断された17名中13名がRILDにより死亡している。
結果
RILDの危険因子は、Tステージ、総腫瘍体積、門脈塞栓症、Child-Pugh Grade Bの肝硬変、および急性肝毒性の発現の有無であった。多変量解析では、肝硬変の程度が際立って独立した予後因子であることが示された。Child-Pugh Grade Aの患者で肝の放射線耐性は次の如くであった:(1)正常肝平均線量(MDTNL:全肝V ―PTVの平均線量)は23Gyまでが認容範囲。(2)累積DVHでは耐容可能な体積百分率はV(5) <86%,V(10)<68%, V(15)<59%, V(20)<49%, V(25)<35%, V(30)<28%, V(35)<25%, V(40)<20%となった。(3)耐容可能なMDTNLは、MDTNL =-1.686の+ 0.023正常肝体積(cm(3))によって推定可能だった。
結論
RILDに対する最大の危険因子は肝硬変の程度であった。放射線に対する肝の耐容性は線量パラメータで推定可能だった。
解説
最近のこの領域での中韓の業績は目を見張ります。このこの論文は5月のIJROBPに掲載された同じ Fudan 大学癌医院からのXu ZY論文:RILDの実験式(Lymanモデル)によるNTCPの解析と対をなすものです。抄録にもありますようにこれらのRILDはほぼ致命的です。
ほぼ同じ対象への分析ですが、Xu論文の要旨は、Lyman modelの各パラメータn(体積依存因子), m(傾きに近い), TD50(50%障害発生線量)およびMDTNL()は Child-Pugh A で1.1, 0.28, 40.5 Gy(Michiganデータとほぼ同じ)、21Gy(それでも低いですね)、Child-Pugh Bで 0.7(Aよりserialな感じ), 0.43(だらだら), 23 Gy(child Aのそれの半分)、(わずか)6Gyだったということです。意味を考えるとChild-Pugh BはAと全然違った要因、しかもより感受性が高く、体積にAより依存しない形でRILDが発生してしまうのかもしれません。生物学的NTCPモデルをこれだけ動かそうとすれば、もはや細胞の数とかではなくて、まずは不完全修復率をうんと高く設定する必要があるように思います。
これに対して、この論文は Child-Pugh Aなら耐容性を推定する線量パラメータなら出ますよ、と上記のように提出していますので、対なのです。
つまり、Child-Pugh Aなら実用的なRILD発生予防のためのこのような正常肝体積などからの推計が可能です、といっています。これらは肝癌の標準治療のプロセスに組み込んでいくべきでしょう。また、この実験式から生物学的NTCPモデルのパラメータの検討も行えそうですね。
(岸 和史)