No.90
限局型小細胞肺癌に対する化学放射線同時併用療法における喫煙継続は生存率低下に結びつく
Continued cigarette smoking by patients receiving concurrent chemoradiotherapy for limited-stage small-cell lung cancer is associated with decreased survival
Videtic GM, Stitt LW, Dar AR, et al.
J Clin Oncol 21(8):1544-1549, 2003
限局型小細胞肺癌に対する化学放射線同時併用療法において喫煙継続群(n=79)と禁煙群(n=107)の治療成績を比較したものである。1989-1999年のカナダのデータで、後ろ向き試験である。
結果は禁煙群の粗生存率が有意に良好であった(P=0,017)。副作用による治療中断の頻度は両群間に差が見られなかった。また喫煙継続群でむしろ癌死の比率が高く、喫煙による他疾患死の影響は見られなかった。局所再発、遠隔転移の比率は両群間に差は見られなかった。
以上より、喫煙継続による生存率の低下の原因は副作用の増強や他疾患死ではなく、治療効果そのものによると推測された。その機序として以下の考察がなされている。
小細胞肺癌にはニコチン様膜受容体が多くこれを介して細胞増殖が刺激され得る。タバコに含まれるポリフェノール系物質が浸潤や転移を活性化させるかも知れない。低酸素化ならびに抗癌剤の分布が悪くなる可能性もある。免疫力低下もあり得る。
解説
No.85で岸和史先生が紹介された文献と対象が同じであり一部重複するが、興味深い内容があるため紹介した。
肺癌放射線治療において、副作用防止の観点から禁煙を勧めるのが一般的ではあるが、小細胞肺癌においては治療効果が落ちる可能性について言及する根拠となると考えられる。強く勧めることで禁煙率が向上すれば治療成績に反映される可能性もある。
小細胞肺癌以外にも、頭頚部癌、腎癌、膀胱癌でも喫煙継続が治療効果に悪影響を及ぼすという報告もあることから、他の疾患の治療においても喫煙継続の影響はゼロではない可能性がある。
(多田 卓仁)