No.96
ケロイド再発予防における術後照射の生物学的効果線量:線量効果関係
Biologically Effective Doses of Postoperative Radiotherapy in the Prevention of Keloids: Dose-Effect Relationship
Henk B. Kal, Ronald E. Veen
Strahlenther Onkol 181:717-723, 2005
目的
ケロイドの切除後放射線照射後の再発率をリビューし、線量の標準化の後に線量効果関係が導き出せるかという疑問に解答を与えた。
方法
ケロイド術後照射の様々なレジメと効果を論じた文献を検索した。それらの生物学的効果線量BEDをLQモデルを用いて計算した。頭頸部とその他の部位のケロイド再発率を区別した。
結果
PubMed上で「keloids」、「surgery」、「radiation therapy」、「radiotherapy」で検索したところ31文献が見つかったが、13文献は線量と再発率の関連が明かでないか、各線量群が10症例以下であったため除外した。手術のみでの再発率は50~80%であった。BED値が10 Gyを越えると、それに応じて再発率は低下した。さらに30 Gyを越えると再発率は10%未満になる。同じ線量では高伸展力部位でも伸展力が高くない部位と比較して優位な再発率の有意な差違は認められなかった。
結論
ケロイドの術後照射には比較的高い線量を短期間に投与する必要があることが示唆された。至適線量はBED値で最低30 Gyが必要と思われた。それには1回照射で13Gy、2分割なら8 Gy/回、3分割なら6 Gy/回、低線量率なら27 Gy 1回投与が必要である。また術後2日以内に照射を開始すべきである。
コメント
ケロイドの術後照射は歴史が古く、現在でも世界中の多くの施設で実施されているが、各施設で極めて多様な照射技術、分割法で行われてるため治療成績の比較を困難にしている。この論文はBEDで照射線量を標準化して治療成績を比較している点で重要である。その結果、線量依存性の存在を示唆したのは評価されるだろう。ただし、人種・手術法・補助療法の差も治療成績に大きく関わってくる疾患であり、その検討無しに少なマテリアルから高伸張力部とその他の部位に差が見られない(p valueは示されていない)とした結果には同意できない。また、BED(Gy)と再発率の相関係数は高伸張力部でr = 0.7897、その他の部位はr = 0.3982となっており、低伸張力部での線量効果関係の存在自体に疑問が残る。評価に耐えうる単一施設での比較試験が望まれる領域である。
(宮下 次廣)