No.98
局所進行食道扁平上皮癌に対する化学放射線療法群と手術追加群の比較
Chemoradiation with and without surgery in patients with locally advanced squamous cell carcinoma of the esophagus
Michael Sthal,Martin Stuschke,et. al.
Journal of Clinical Oncology 23:2310-2317, 2005
目的
局所進行食道癌患者の根治的治療に代わる治療法として,化学放射線療法あるいは化学放射線療法後手術が広く行われている。しかし,化学放射線療法に加えて手術を行う意義は不明であり,これを検討する。
方法
T3-4,N0-1,M0の局所進行食道扁平上皮癌患者172名を無作為に2群に分けた。手術施行群(arm A: 86例)は導入化学療法(フルオロウラシル500mg/m2,ロイコボリン300mg/m2,エトポシド 100mg/m2,シスプラチン30mg/m2をday 1-3,3週毎に3クール)後に化学放射線療法(40Gy/4週間,シスプラチン50mg/m2,エトポシド80mg/m2をday 2-8)4週間後手術(食道切除再建,リンパ節2領域廓清)を施行した。非手術群(arm B: 86例)は同メニューの導入化学療法後に化学放射線療法(65Gy,化学療法同メニュー)を行った。Primary endpointは生存期間である。
結果
観察期間中央値は6年間であった。2年粗生存率はarm Aは39.9%, arm Bは35.4%で同等であった(p=0.007)。生存期間中央値もarm A: 16.4ヶ月,arm B:14.9ヶ月で同等であった。2年局所非再発生存率はarm A:64.3%で,arm B:40.7%に比べ良好であった(p=0.003)。治療関連死はarm A:12.8%で,arm B:3.5%に比べ多かった(p=0.03)。多変量解析では導入化学療法の腫瘍の反応性が独立した予後因子であった(p<0.0001)。
考察
化学放射線療法に手術を加えることにより局所コントロールは向上したが,予後の改善は得られなかった。導入化学療法反応群が,どちらの治療法であっても予後良好と特定できた。
コメント
局所進行食道癌に対する根治的化学放射線療法と化学放射線療法後外科切除の前向き比較試験の結果である。両群は同等な予後であり,治療関連死は非手術群で多かった。しかし,局所制御は手術を加えた群で良好であった。今後は手術を加えて利益を得るサブグループの特定が必要である。フランスのグループがより大規模な症例数で同様の試験をおこなっており,その解析結果が待たれる。
(内田 伸恵)