No.149
再発頭頸部癌(扁平上皮癌)に対する再照射後の再発様式:標的決定の影響
The pattern of failure after reirradiation of recurrent squamous cell head and neck cancer: Implications for defining the targets
Popovtizer A, Gluck I, Chepeha B, et al.
Int J Radiat Oncol Biol Phys. 74(5):1342-1347, 2009
はじめに
進行頭頸部癌に対する放射線治療後の再発は局所再発が主体である。近年、再発頭頸部癌に対する再照射により長期の腫瘍制御が認められる場合があるという多くの報告が認められる。その際、再照射時の照射野を肉眼標的体積に限局させるべきか、予防領域を含めるべきかが問題となる。再発部肉眼標的体積(rGTV)に限局したターゲットとすることで、再照射される正常組織の容積を低減できるが、それによる腫瘍の再発様式への影響に関しては明らかにされていない。また再照射における照射野ならびに線量と局所再発部位との関連について検討された報告は見られない。
当施設でタイトなマージンでrGTVに限局した照射野を用い、3DRTもしくはIMRTにより再照射を施行しているが、今回、再照射の再発様式ならびに晩期反応について検討した。
対象および方法
切除不能な再発頭頸部癌ならびに2次癌に対して、再照射(根治治療に準じた線量)を施行した66例を後向きに検討した。照射は3次元放射線治療(3DRT)もしくはIMRTで施行された。標的体積はrGTVに0.5cmのマージンを含めているが、予防的リンパ節領域や周囲の顕微鏡的進展範囲は含めていない。局所再発部位(LRFs)は再発時の画像とrGTVsとを比較して検討した。
結果
初回放射線治療線量の中央値は64Gyであり、再照射までの期間の中央値は37か月であった。再照射線量の中央値は68Gy(8例;50-60Gy, 49例;60-70Gy, 5例;70-75Gy)であった(治療期間の中央値41日、累積線量の中央値129.2Gy)。47例(71%)は同時化学療法が併用され、31例(47%)では多分割照射、加速分割照射が用いられた。
観察期間の中央値は42か月で、16例(23%)が無病生存例であった。47例(71%)でLRFが認められ、45例(96%)で95%線量域に再発が認められた。また再照射による再発群と腫瘍制御群の間に投与線量の差異はみられなかった。15例(77%)は3度目の再発もしくは腫瘍制御に至らない状態であった。
ほぼすべてのLRFsは2例(4%)を除き、rGTV内に認められた。19例(29%)でグレード3以上の晩期反応が認められ、その多くは嚥下困難であった(12例)。
結論
顕微鏡的進展範囲を含む予防的照射を行わないにも関わらず、ほとんどの再照射後の再発は再発部肉眼標的体積 (rGTV)内に認められた。この結果により再照射における標的をrGTVに限局することで、再照射される容積の軽減が図れる。
コメント
近年、IMRT(Tomotherapy含む)や定位照射(サイバーナイフなど含む)などの高精度放射線治療の技術が進歩し、照射後の再発例に試みられる例も増えていると思われる。しかしながらその際に、再照射時における標的ならびに照射野の設定、高線量投与後の局所制御率ならびに晩期反応の頻度など、検討されなければならない点も多い。今回の報告においても照射野外や辺縁再発が少ないのは、再照射後の再発率が高いことと関連している可能性があることも考慮する必要がある。今回の報告も含め今後詳細な検討が求められる。
(高橋 健夫)