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公益社団法人日本放射線腫瘍学会

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No.150
小児がん生存者における腹部照射後の妊孕性と妊娠に関するアウトカム

Fertility and pregnancy outcome after abdominal irradiation that included or excluded the pelvis in childhood tumor survivors.

Sudour H, Chastagner P, Claude L, et al.
Int J Radiat Oncol Biol Phys. :-, July 23, 2009. (Epub, in press)

目的

腹部および/または骨盤照射後の長期生存女性における妊孕性を評価する。

方法と対象

腹部および/または骨盤部の放射線治療により小児がんを克服した女性の思春期と妊娠の結果を分析した。この研究は1975年から2004年にフランスの2施設(Nancy and Lyon)で行われた。データはカルテ記録およ び女性に送付した質問表から得た。

結果

小児期に腹部および/または骨盤照射を受け、生存している18歳以上の女性患者84名が対象となった。57名は骨盤を含まない腹部照射で治療され、うち52名(91%)は正常な思春期を経過、23名(40%)で1回以上の妊娠暦があった。骨盤部を含む腹部照射で治療された27名は、うち10名(37%)が正常な思春期を経過し、5名(19%)が1回以上の妊娠歴を有した。22名(17名は骨盤照射あり)で生殖能力が劣弱であると考えられた。28名の女性で総計50回の出産があり、死産1回、流産1回が含まれた。未熟児、低出生体重児の罹患率が高かったが、先天奇形の罹病率は高くなかった。

結論

骨盤を含まない腹部照射を施行された患者では妊孕性は保たれる。妊孕性保持には、他の治療法(ex.アルキル化剤を含む化学療法)の影響も考慮する必要がある。骨盤を含む照射では、妊孕性はしばしば障害され、妊娠は困難である。しかし、その中でも幾人かは妊娠可能であった。放射線治療後の妊娠を阻む最も重要な要因は卵巣及び子宮への総線量である。患者の経過観察を行う上でこれらの線量を体系的に記録しておく必要がある。

コメント

小児がん治療の進歩により生存率は改善され、治療に伴う晩期有害事象が懸念されるようになった。放射線治療による妊孕性への影響も然りである。今回の報告では妊孕性を障害する最重要因子は卵巣及び子宮への総線量とされ、それぞれ4Gy以下であれば影響が少ないと推定されている。本研究では症例数が少ないこと、生殖器への線量の一部が仮定に基づく推定/計算値であることなどの問題点もあるが、大規模な研究による結果が出るまでは、この値がひとつの参考になると思われる。


(土屋 奈々絵/戸板 孝文)

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