No.170
骨転移患者が神経障害性疼痛を有する割合についての研究
Neuropathic Pain Features in Patients With Bone Metastases Referred for Palliative Radiotherapy
Marc Kerba, Jackson S.Y. Wu, Qiuli Duan, et al.
J Clin Oncol 28:4892-4897, 2010
目的
骨転移患者が神経障害性疼痛を有する割合を評価する。また、神経障害性疼痛の有無によって疼痛の強さ、機能障害、QOLに差があるかどうかを評価する。
対象・方法
2006年12月から2008年3月までにカナダのTom Baker Cancer Centreにおいて有痛性骨転移に対し放射線治療を施行した患者を対象に前向きに横断研究を行った。
神経障害性疼痛の有無はSelf-Reported Leeds Assessment of Neuropathic Symptoms and Signs (S-LANSS)を用いて評価し、12点以上であれば神経障害性疼痛と診断した。疼痛の強さと機能障害はBrief Pain Inventory (BPI)を用いて、QOLはEORTC QLQ-C30を用いてそれぞれ評価した。
結果
98人が登録され、17%(95% CI, 10―24%)の患者が神経障害性疼痛と診断された。神経障害性疼痛を有する患者は有さない患者よりもBPI worst pain scoreが有意に高かった(8.3 vs. 7.0;P=.016)。機能障害およびQOLに関しては神経障害性疼痛の有無で有意差を認めなかった。
結論
骨転移患者において神経障害性疼痛を有する場合がそれなりにあり、神経障害性疼痛を有する患者では疼痛が有意に強かった。
コメント
S-LANSSとは7項目からなる簡易な質問票で、慢性疼痛においては神経障害性疼痛の診断ツールとして信頼されているようです(J Pain 2005;6:149)。
有痛性骨転移に対する線量分割において、ASTROから新しく公表されるガイドラインでも8 Gy単回照射が標準治療として認められていますが、神経障害性疼痛に関しても8Gy単回照射が分割照射と同等の有効性を有するかどうかは、過去に行われた神経障害
性疼痛を対象とした唯一の試験であるTROG 96.05でも明確な結論は得られておらず、未だ不明のままです。
つまり、有痛性骨転移患者に対する最適な線量分割を考えていく上で、体性痛なのか神経障害性疼痛なのかを区別することが今後ますます重要になってくる可能性があり、S-LANSSのような簡易な質問表で診断がつくのであれば非常に大きな武器になると感じました。
(聖路加国際病院 中村 直樹)