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公益社団法人日本放射線腫瘍学会

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No.180
頭頸部癌に対する化学療法併用IMRT後の口渇低減:耳下腺線量制約に加えて

Reducing Xerostomia After Chemo-IMRT for Head-and-Neck Cancer: Beyond Sparing the Parotid Glands

Little M, Schipper M, Feng FY, et al.

Int J Radiat Oncol Biol Phys in press (Epub 2011 Nov 4)

目的

頭頸部癌に対する化学療法併用IMRT後の口渇について、耳下腺の線量制約に加え、他の唾液腺の線量低減が影響を与えているか評価した。

対象と方法:前向き試験において、78例の中咽頭癌および上咽頭癌Stage III-IVの患者に対し、両側耳下腺、小唾液腺を含む口腔、ターゲットの外側の対側顎下腺(対側のlevel I 領域がターゲットでない場合)に線量制約をかけて化学療法併用IMRT を施行した。
治療前および周期的に24ヶ月にわたり、患者から回答された口渇質問表(xerostomia questionnaire: XQ)スコアと観察者が評価した口渇スコアを記録した。

また、刺激性および非刺激性の唾液量を各々の耳下腺・顎下腺で測定した。
口腔平均線量は小唾液腺障害の代替として用いられた。
回帰モデルにてXQスコアと観察者評価の口渇の予測因子を評価した。

結果

単変量解析で、口腔、耳下腺、顎下腺の平均線量および治療前XQスコア、照射終了からの期間、刺激性および非刺激性の耳下腺の唾液流速は、有意にXQスコアの予測因子であった。
同様な因子は、観察者評価の口渇でも有意な予測因子であった。
口腔、耳下腺、顎下腺の平均線量は中等度に互いに相関していた(r = 0.47 - 0.55)。
多変量解析において、耳下腺および顎下腺の平均線量の調節後も、口腔平均線量(p< 0.0001)、照射からの期間(p < 0.0001)および刺激性の耳下腺の唾液(p <0.025)はXQスコアの有意な予測因子であった。
散布図では明らかな閾値は示されなかったものの、口腔の平均線量<40 Gyと対側顎下腺<50 Gyは、ほぼ全ての治療後の時期において、主観的および客観的口渇低減と関連していた。

結論

耳下腺、顎下腺、口腔の平均線量は、化学療法併用IMRT後の主観的および客観的な口渇の有意な予測因子であった。
また多変量解析にて口腔は耳下腺および顎下腺線量調整後も有意な予後因子であった。
これらの結果は、耳下腺の線量制約に加えて、IMRTによって全ての唾液腺の線量制約を努力すべき事を支持している。

コメント

本報告では、頭頸部IMRTにおいて口渇を減らすためには、耳下腺の線量制約に加えて他の唾液腺(顎下腺や小唾液腺)も線量制約すべきとの結論づけている.

当施設でも頭頸部IMRTを開始しており、従来のconventionalな治療法と比べて、耳下腺の線量を抑える事が出来るようになっているものの、患者の自覚的な口渇の改善にはまだ十分とは言えない。
顎下腺は頸部のリンパ節領域、特にIb領域に含まれるため、線量制約が可能な症例は限られると予想されるが、症例によっては積極的に線量制約を検討しても良いかと思われる。

今後、顎下腺、小唾液腺の具体的な線量制限の閾値の検討や、IMRTによって線量を低下した部分での頸部リンパ節再発が増えないかなど、更なる検討が必要と思われるが、今回の報告が頭頸部IMRTのさらなる発展のための一助となると考え、Journal clubで報告させていただいた。

Evidence level IIa

PMID: 22056067


(群馬大学 白井 克幸/齋藤 淳一)

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