No.182
骨転移の緩和的放射線治療に関する臨床試験の最新の系統的レビュー
Update on the Systematic Review of Palliative Radiotherapy Trials for Bone Metastases.
Chow E, Zeng L, Salvo N, et al.
Clinical Oncology 24: 112-124, 2012.
目的
骨転移に対する一回照射と分割照射についてのメタアナリシスを更新する。
対象と方法
骨転移の緩和的放射線治療に関する,一回照射と分割照射とのランダム化比較試験の結果を,PubMed,Medline,Cochrane Libraryなどを駆使して収集し,解析を行った。
対象は,脊髄圧迫,馬尾症候群,病的骨折等を伴わない uncomplicated bone metastases で,治療法は通常の外照射に限定し,半身照射やRI治療は除外した。
結果
一回照射群と分割照射群との間には,有効率(60% vs 61%),疼痛消失率(23% vs 24%),治療後の病的骨折発生率(3.3% vs 3.0%),そして治療後の脊髄圧迫発生率(2.8% vs 1.9%)に,統計学的有意差はみられなかった。
再照射は有意に一回照射群に多かった(20% vs 8%,p<0.00001)。急性期有害事象には統計学的有意差はみられなかった。
上記は intention-to-treat 解析の結果であるが,脱落例を除いた評価可能例についての解析でも,この傾向に変化はなかった。
結論
一回照射は,長期予後が期待できない症例にとどまらず,長期予後が期待できる症例においても,標準治療として位置付けられるべきである。
コメント
骨転移における線量分割の選択は,古くからの課題である。
uncomplicated bone metastasis に対する放射線治療の除痛効果は,一回照射でも分割照射に劣らないことがすでに多くのRCTで証明されているにも関わらず,いまだに分割照射だけが標準治療の座を独占し続けている現状に業を煮やした Chow が,2007年に続いて新たにメタアナリシスの結果を発表した。
放射線治療後の病的骨折も脊髄圧迫も,分割照射と一回照射で統計学的有意差がみられなかった点は注意すべきであり,20%の確率で再照射が必要となり得ることが許容できれば,予後良好例でも一回照射が標準治療となり得ることが示された。
一回照射は、かなり大きな照射野でも急性期の副作用が少ないとの印象を持っていたが、本報告では有意差はみられておらず,個人的には意外な結果であった。
放射線治療の適応としてはごく日常的な骨転移であるが,気を付けていないと感違いや思い込みに陥りやすい分野でもあり,自分自身も注意が必要だと認識を新たにした。
解析方法については,リスク比が高いほど分割照射がよい項目と,逆にリスク比が高いほど一回照射がよい項目が混在しているので,混乱を避けるため統一してほしかった。
(KKR札幌医療センター放射線科 永倉 久泰)