No.186
後発腫瘍としての甲状腺癌: 発症間隔の特徴
Risk of Subsequent Primary Thyroid Cancer after Another Malignancy: Latency Trends in a Population-based Study
Lal G, Groff M, Howe JR, et al.
Ann Surg Oncol 2012, 19:1887-1896.
目的
悪性腫瘍治療後に発症する原発性甲状腺癌のリスクを発症間隔に着目して評価
対象及び方法
・代表的10種の腫瘍のSEER (Surveillance, Epidemiology, and End Results) 登録症例において経過観察データを解析
・SIR (Standardized Incidence Ratio = 観察頻度/予測頻度) で評価
結果
・1975-2008年に診断された 10種の腫瘍 215万2303例中、2502例が甲状腺癌を発症
・10種のうち8種において治療後の甲状腺癌の SIR は高い(リンパ腫、結腸、腎、皮膚黒色腫、肺、前立腺、白血病、乳腺)。一方、子宮・膀胱の2種では一般の頻度と同等 (SIR ≒ 1)。
・なかでも腎・乳腺は甲状腺癌との関連が強く、逆に甲状腺癌のあとの腎癌・乳癌も高頻度。
・腎癌治療後の甲状腺癌の SIR 2.95 (95%CI: 2.45-3.52)
発症間隔別に 6.13(<1年)、2.61(1-5年)、2.56(5-10年)、2.46(10年<)
・同じく乳がんでは SIR 1.22 (95%CI: 1.14-1.31)
発症間隔別に 2.13(<1年)、1.22(1-5年)、1.16(5-10年)、1.05(10年<)
・甲状腺癌の後発頻度に対し、放射線治療の先行の有無は無関係
・組織別には、甲状腺乳頭癌の SIR が高い。
結論
・後発する甲状腺癌の頻度は治療後1年以内に高い。すなわち定期検査により偶発的な他癌の発見が増加(= surveillance bias)
・重複癌の理由として、家族性のものや放射線誘発癌はまれ。
・甲状腺癌は腎癌・乳癌と相互に関連しているがその原因は不明。
コメント
放射線誘発癌、なかでも甲状腺癌と乳癌は社会の関心が高い。甲状腺癌の頻度は悪性腫瘍の治療後において予測値より明らかに高かったが、放射線治療の有無は無関係であった。今後は大規模な定量データがますます重要となる。
(近畿大奈良病院放射線科 岡嶋 馨)