No.251
根治不能な頭頸部癌に対する緩和照射法のランダム化比較試験
Randomized controlled trial to identify the optimal radiotherapy scheme for palliative treatment of incurable head and neck squamous cell carcinoma
Abrahim Al-Mamgani et al
Radiother Oncol. 2020 Aug;149:181-188. doi:
10.1016/j.radonc.2020.05.020. Epub 2020 May 14.
背景
根治不能な頭頚部扁平上皮癌(HNSCC)への緩和治療として最適な放射線治療の方法を比較したランダム化比較試験(RCT)は存在しない。効果と毒性とQOLについて、2つの照射法を比較するRCTを施行した。
方法
根治照射の適応がない局所進行、または限定的な転移を伴うHNSCCの患者を、 36Gy/6回で週に2回のarm 1、50Gy/16回で週4回のarm 2の2群に1:1に無作為に割り付けた。
結果
登録患者は34人と遅れが出たため、この試験は早期に打ち切られた。奏効率はarm 1で38.9%、arm 2で57.1%、p=0.476であった。局所領域での増悪までの期間は、中央値に達しなかった。局所領域の1年制御率は、arm 1で57.4%、arm 2で69.3%、p=0.450であった。1年全生存率はarm 1で33.3%、arm 2で57.1%、中央値はarm1で35.4週、arm2で59.5週、P=0.215であった。Grade 3以上の急性期の毒性はarm 1で16.7%、arm 2で57.1%、P=0.027で、arm 1では低かった。Grade 3の粘膜炎は最も差があり、arm 1で5.6%、arm 2で42.9%、P=0.027であった。しかし、 患者報告によるQolスコアでは有意な悪化は見られなかった。
結論
早期に打ち切られたこの不完全な調査では明確な結論は得られなかった。長期の放射線治療は有意に優れた治療成績を示さなかったが、G3以上の粘膜炎との関連は強かった。QoLスコアでは有意な差異は見られなかった。従って、短期の放射線治療が支持されるかもしれない。統計学上の問題があり得るため、この推奨の解釈には慎重にすべきである。
コメント
進行頭頸部癌患者への治療選択として、負担が軽く、症状軽減が見込める治療法は限られ、緩和照射が選択されることが多い。頭頸部緩和照射の最適な線量分割については定まっていない。この試験では標準群として、英国北部で一般的な所謂Christie regimenを用い、準根治線量のため、急性毒性は強めであった。試験群は週2回の寡分割照射であり、緩和としての有用性が示唆された。早期に中止され、増悪率や生存率で有意差が見られなかったとしても、通院期間が短く、 早期毒性の軽い36Gy/6回が支持された結果は、臨床医には大変有難い。一方、国内ではJROSGのQUAD shot研究が予定されている。2日連続での3.7Gy1日2回の照射を、3~4週ごとに繰り返すRTOG8502のレジメンである。COVID-19感染拡大のもと、進行癌患者が増えており、連日通院困難や入院制限、照射中の感染や濃厚接触など、日々問題が頻発している。実用性を含め、患者ごとに最適な照射法を検討する機会が増えていくと思われる。
(東京医療センター・松本 秀樹、萬 篤憲)
Evidence Level 2b
PMID: 32417345