No.243
婦人科腫瘍に対する放射線治療後の脆弱性骨折
Pelvic Insufficiency Fractures After External Beam Radiation Therapy for Gynecologic Cancers: A Meta-analysis and Meta-regression of 3929 Patients.
Sapienza LG, Salcedo MP, Ning MS, et al.
Int J Radiat Oncol Biol Phys, 2020 Mar 1;106(3):475-484
目的
婦人科がんの放射線治療後の骨盤部脆弱性骨折(PIF: pelvic insufficiency fracture)の頻度と部位を調べる。
方法
1980-2018年の論文をPUBMED/EMBASE/Google search にて検索し、 (radiotherapy, bone fracture, and cervix/endometrium/vagina cancer)検索された702報を検討し最終的に条件を満たした21論文 (3929例、1992-2018に出版)を解析した。
(条件:上記 3疾患、放射線治療あり、治療後に画像での経過観察あり、無症状も含む)
経過観察期間の中央値はほぼ21- 57か月。
結果
504/3929例 (14%) にPIFが発症し、うち 61% は有症状、骨折件数は 704 (1.72件 /人) だった。骨折の診断方法は
CT のみ(1報)、CTかMR (8)、MRのみ (4)、PET など組み合わせ(8)だった。
骨折部位は以下: 仙腸関節部 (39.7%)、仙骨椎体(33.9%)、恥骨 (13%)、腰椎 (7%)、腸骨 (2.8%)、寛骨 (2.1%)、大腿骨頸部 (1.5%)放射線治療から骨折 までの期間は 7.1 - 19か月 だった。
多変量解析で以下の項目を検討した結果、①放射線治療時期 (p=.0074)、および ③IMRTの場合にPIF は低頻度 (p=.0299)だった。
(①出版年 ②放射線治療の目的(術後か根治的か) ③放射線治療方法 ④治療された地域)
結論
無症状の人も含めると、これまでの報告よりも高頻度に PIF は起こる。
コメント
骨盤部放射線治療後に骨折が増加することはよく知られており、SEER (Surveillance, Epidemiology, and End Result) database の解析では、その頻度は 7% である(BaxterNN, JAMA 2005)。しかしSEERには有症状で入院処置したものが登録されているので、真の骨折頻度はより高いと推定され、無症状の骨折も含めた頻度を評価することがこの論文の目的である。
通常の脆弱性骨折は圧倒的に仙骨外側部と恥坐骨枝に多い。それに比して、今回の集積データでは照射部位に骨折が集中していることは明らかである。線量との関連は本解析では不明であるが、これまで40Gy前後を境界に骨折が増加すると結論するものが多い。この報告でも、前後対向二門に比して、骨への照射範囲が広い4門照射で骨折頻度がはるかに少ないのは、30-40Gy程度のところに閾値があることを間接的に裏付けている。一方、骨盤部IMRTではしばしば仙骨が高線量領域になることは要注意である。
また、治療から骨折までの期間は7-19か月と、本報告では現実よりもかなり短い印象だ。経過観察期間が短い論文が解析された影響もあるので、さらに長期間注意する必要がある。
PMID: 31580930
(近畿大奈良・岡嶋 馨)