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公益社団法人日本放射線腫瘍学会

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No. 239
胃癌に対する緩和的放射線療法;システマチックレビューとメタアナリシス

Palliative radiotherapy for gastric cancer: a systematic review and meta-analysis

Jeremy Tey, Yu Yang Soon, Wee Yao Koh, et al.
Oncotarget. 2017 Apr 11;8(15):25797-25805.
DOI: 10.18632/oncotarget.15554

目的と背景

症状のある局所進行胃癌に対する緩和的放射線療法の有効性と安全性をレビューし、症状緩和のための至適スケジュールを決定する。

方法

1995年~2015年に発行された、MEDLINEとCENTRALで入手可能な文献から調査した。臨床的結果として、胃の出血、疼痛、および閉塞(通過障害)の緩和を調査の対象とした。

結果

150編の文献から、7編の非比較観察研究(291症例を含む)が対象となった。そのうち、3編の日本からの報告が含まれた(Hashimoto K, J Cancer Res Clin Oncol., 2009(国立研究がんセンター中央病院)、Asakura H, J Cancer Res Clin Oncol., 2011(静岡がんセンター)、Kondoh C, BMC Palliat Care. 2015(愛知県がんセンター))。全症例291例の70%が男性(206例)で、年齢の中央値は66歳(61~78歳)、観察期間の中央値は2.1~35.4か月であった。1回線量は1.8~8Gy 、総線量は8~50Gyと、放射線治療の総線量や分割法には大きな差異があった。最も多く用いられた方法は30Gy/10回であった。57例(20%)で化学療法が併用された。

 治療に対する臨床的結果のプール解析ではそれぞれ、出血74%(各文献では50~80.6%)、疼痛67%(同45.5~86%)、閉塞68%(同51.1~81%)で症状緩和を得た。BED≧39Gyの高線量群とBED<39Gyの低線量群では、出血に対する結果に統計学的有意差はなかった(p=0.39)。放射線単独で治療した症例におけるGrade 3-4の有害事象は15%以下であった一方で、化学療法併用で治療した症例では25%であった。QOLに関する成績は報告されなかった。

結論

放射線治療を受けた症例の2/3以上で臨床的有用性を認めた。低いBEDの方法が症状緩和には適しているように見える。放射線単独で治療した症例の有害事象は許容されると考える。症状緩和のための至適な治療スケジュールは明らかにならなかった。QOL成績に関する緩和的胃照射の効果を決定するための前向き研究が必要である。

コメント

本研究は、胃癌の局所症状緩和における緩和的放射線療法の有効性をまとめた初めての報告です。筆者らはDiscussionの中で、筋浸潤を伴う膀胱癌に対する緩和的放射線療法における21Gy/3回法と35Gy /10回法で同等の有効性であったとする報告(Duchensne GM, Int J Radiat Oncol Biol Phys., 2000)や肺癌に対する対症的胸部照射においてBED=35Gyをカットオフ値として総線量による症状緩和の差がなかったとする報告(Fairchild A, JCO, 2008)などを引用したうえで、予後が限られており、機能低下があり、また全身病巣が急速に進行しており速やかな全身治療の導入が必要な症例の症状緩和には低線量(BED<39Gy)の方法が適しているようだ、と述べています。

 筆者らが述べるように本研究では、線量効果や至適な治療スケジュールを論じるには線量分割にばらつきが大きいこと、QOL評価等、患者の主観の報告に基づくアウトカム(patient reported outcomes, PROs)がないことなどがLimitationとなりますが、症状のある局所進行胃癌症例に対する緩和的放射線療法を検討する上で参考になりうる報告と考えます。

Evidence Level Ia
PMID: 28445941

(日本赤十字社前橋赤十字病院 放射線治療科 清原 浩樹)

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