No. 238
前立腺癌に対する画像誘導放射線治療における連日法と週一回法の比較
Daily versus weekly prostate cancer image-guided radiotherapy: Phase 3 multicenter randomized trial.
de Crevoisier R, Bayar MA, Pommier P, et al.
Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2018 Jul 30. [Epub ahead of print]
DOI: 10.1016/j.ijrobp.2018.07.2006.
目的と背景
前立腺癌の放射線治療において、画像誘導放射線治療(IGRT)による位置補正の有用性が遡及的解析を中心に報告されてきているが、その最適な頻度については明らかではない。
方法
限局性前立腺癌患者にIGRTを連日施行する群(試験群)と週1回施行する群(対照群)へ割付した非盲検化第III相ランダム化比較試験。放射線治療は3D-CRT(約30%)あるいはIMRT(約70%)、画像照合はCBCTによる前立腺照合(約80%)、前立腺内金属マーカーによる照合(約20%)。照射部位は局所のみで、総線量は70-80Gy。primary endpointは5年非再発生存率、secondary endpointは全生存率と有害事象、事後解析で生化学的非再発期間、臨床非再発期間および他癌非発生期間の評価。
結果
観察期間中央値は4.1年。試験群236名、対照群234名。年齢の平均値は70歳。およそ70%が中リスク、30%が高リスク(D’Amico分類)の症例群で、全体のおよそ半数で短期ないし長期ホルモン治療が併用された。primary endpointの5年非再発生存率は有意差を認めなかった(試験群77% vs 対照群75%, p=0.330)。生化学的非再発期間は試験群で有意に長かったが (HR:0.45, 95%CI 0.25-0.80, p=0.007)、5年全生存率は試験群で有意に低かった(83% vs 95%, p=0.042)。事後解析において他癌発生が試験群において有意に高率に観察された(10% vs 5%, 他癌非発生期間:HR:2.21, 95%CI 1.10-4.44, p=0.026)。有害事象はグレード1以上の急性期直腸出血(6% vs 11%, p=0.014)および晩期直腸障害(5年:37% vs 46%, p=0.027)であった。
結論
対照群と比較し、試験群では生化学的非再発期間および、直腸有害事象の有意な改善が見られた。
コメント
日本医学物理学会の2016年の全国アンケート調査によると、本邦では限局性前立腺癌の局所IMRTにおけるIGRT技法として2D照合画像が26%、3D照合画像がおよそ70%であった ※[1]。しかし、その適正な方法や頻度についてエビデンスやコンセンサスに乏しいのが現状である。
本試験は、限局性前立腺癌に対する放射線治療において、治療有効性に対するIGRT手法(頻度)の意義を評価した初めての無作為化第III相臨床試験報告である。しかしながらprimary endpointの5年非再発生存率の改善はみられず、晩期直腸有害事象についてもグレード2以上では改善がみられなかった(5年:13% vs 10%, p=0.261)。観察期間が短いこと(中央値4.1年)、3D-CRT症例が30%程度含まれること、またPTVマージンが前立腺/精嚢周囲1cm(直腸側5mm)と広めであったことの考慮が必要である。
また、試験群において他癌発生が多く認められているが、発生までの期間が短く(中央値31ヶ月)、およそ80%が骨盤外発生でありこちらも解釈に注意が必要である。
Evidence Level Ib
PMID: 30071296
(京都大学 相澤 理人、倉敷中央病院 板坂 聡)