No.72
前立腺癌に対する根治的放射線治療後の抗アンドロゲン療法:phase III RTOG85-31の長期成績
Androgen suppression adjuvant to definitive radiotherapy in prostate carcinoma:
Miljenko V.Pilepich, Kathryn Winter, Colleen A.Lawton, et al
Int J Rad Oncol Biol Phys 61(5):1285-1290, 2005
目的
RTOG 85-31 は、予後不良群の前立腺癌に対する放射線治療後の、Goserelin を用いた抗アンドロゲン療法の有用性を評価するために計画された。
方法と対象
触知可能な前立腺癌で、前立腺を越えて広がるもの(T3)または領域リンパ節転移のあるものを対象とした。前立腺摘出後の症例は、前立腺被膜から切除断端への腫瘍の浸潤あるいは精嚢への浸潤が組織学的に認められた場合は対象に含めた。組織的分化度、リンパ節転移の有無、PSA値、前立腺摘出の有無によって症例を層別化した。放射線治療およびその後の抗アンドロゲン治療(Arm I)、放射線治療後再発まで無治療(Arm II)とにランダマイズした。Arm I では、抗アンドロゲン治療は放射線治療の最終週の間に開始することとし、無期限にまたは再発の兆候が現れるまで継続した。
結果
1987年から1992年の間に、977例(Arm I: 488例、Arm II: 489例)が登録された。2003年7月の時点で、経過観察期間の中央値は全例で7.6年、生存症例においては11年であった。10年での絶対生存率は、照射後にアジュバントホルモン療法を行った方が優位に高かった(Arm I vs II: 49% vs 38%, P=0.002)。10年における局所再発率はアジュバント群で23%に対しコントロール群で38%であった(p<0.0001)。10年における遠隔転移率と原病死亡率はそれぞれ24% vs 39%(p<0.0001), 16% vs 22%(P=0.0052)であって、いずれもホルモン療法群で良好であった。
結論
前立腺癌の予後不良群においては、放射線治療後の抗アンドロゲン療法は、原病の制御のみならず絶対生存率の有意な改善に貢献した。生存率の改善は、 Gleason score 7-10 の症例においてより顕著であった。
コメント
T3症例、N 陽性の症例には放射線治療に加えてアンドロゲンブロックが必要、というのはすでにコンセンサスだと思われるが、本論文の主旨は、RTOG 85-31 の5年の時点での報告(JCO 15: 1013-102, 1997)では絶対生存率において有意差がなかったものが10年の時点で有意差が証明された、という点である。(5年の時点でも局所制御率、遠隔転移、無病生存率においては有意差があった。)
また、このプロトコールでは前立腺のみでなく骨盤部照射が行われている。T3N0でホルモン療法も行う場合、局所のみの照射で十分な群の条件が明らかになればありがたい。
(岡嶋 馨)