No.116
全骨盤照射と前立腺局所照射、ネオアジュバントとアジュバント抗アンドロゲン療法のphase III 臨床試験RTOG 94-13の結果、特にホルモン療法と放射線治療の予期しない相互作用について
An update of the phase III trial comparing whole pelvic to prostate only radiootherapy and neoadjuvant to adjuvant total androgen suppression: updated analysis of RTOG 94-13, with emphasis on unexpected hormone/radiation interactions
Colleen A Lawton, et al
Journal Club No. 116 Int J Radiat Oncol Biol Phys., 69:646-655, 2007
目的
この臨床試験は抗アンドロゲン療法total androgen suppressionと全骨盤照射+前立腺局所照射追加治療群(WPRT)が、抗アンドロゲン療法と前立腺局所照射群(PORT)に比べ非再発生存率が10%向上するか否かを検証するためにデザインされた。同時にネオアジュバント抗アンドロゲン療法(NHT)+放射線治療が、放射線治療後抗アンドロゲン療法(AHT)に比べて非再発生存率が10%向上するか否か検証することも目的とした。
対象と方法
適格基準は臨床上局所限局の前立腺癌でPSA値は100ng/ml未満。1995年から1999年までに1323名が登録され1292名が適格であった。Roach foamulaで予測リンパ節転移リスクが15%を超える患者を対象とした。患者は Tステージ、PSA値、Gleasonスコアで階層化した。
WPRT+NHT,WPRT+AHT,PORT+NHT,PORT+WPRT の4群で無作為比較した。放射線治療は全て1.8Gy/回の通常分割照射、総線量70.2Gyで、WPRTでは全骨盤照射50.4Gy後、前立腺と精嚢腺に限局して追加照射をおこなった。PORTでは最初から前立腺と精
嚢腺のみを含む照射野で70.2Gy照射した。
抗アンドロゲン療法はLH-RH agonistと経口抗アンドロゲン剤(flutamide)の併用で投与期間はNHT,AHTいずれも4ヶ月間である。NHTは放射線治療2ヶ月前から開始し、放射線治療期間中も抗アンドロゲン療法を継続した。AHTは放射線治療終了後すぐに抗アンドロゲン療法を開始した。
結果
非再発生存と全生存はNHT vs AHT, WPRT vs PORTでいずれも有意差がなかった。WPRT+NHT群がWPRT+AHT群、PORT+NHT群に比べ、非再発生存が良好な傾向であった(p=0.065)。WPRT+AHT群は一番予後不良であった。
考察
今回のRTOG9413の結果からはNHT併用ではPORTよりもWPRTが良好な非再発生存を得た。NHT+WPRTはWPRT+AHTに比べ非再発生存が良好であった。NHT+WPRTがPORT+AHTに比べて良好な治療成績を示せなかった原因を、別の試験で検討する必要がある。今まで知られていない生物学的現象が影響しているのかもしれない。抗アンドロゲン療法と放射線治療のタイミングにより、予期しなかった相互作用が存在したのかもしれない。
コメント
Roach foamulaで15%を超えるリンパ節転移のリスクと予測される局所限局前立腺癌に対する、予防的WPRTをおこなう意義、さらに抗アンドロゲン治療をする場合、放射線との併用タイミングはNHTがよいのか、AHTが良いのか、同等なのかについて検討したもの。
WPRT+NHTが推奨される結果であるが、NHT vs AHT, WPRT vs PORTでいずれも有意差がなかったため、すっきりしない。NHT開始後3-4週で免疫系が変化してT-Cellが前立腺に浸潤したという報告があるため、アポトーシスが起こるのではないかと述べているが想像の域を出ない。結局、リンパ節転移のリスクが15%を超えると予測される局所限局前立腺癌に対して、WBRTが必要であるかについての明瞭な答えは、今後の検討を待つ必要がある。
(内田 伸恵)