No.230
PACIFIC study : III期非小細胞肺癌に対する化学療法後治療としてのデュルバルマブ
Durvalumab after Chemoradiotherapy in Stage III Non-Small-Cell Lung Cancer.
Antonia SJ, Villegas A, Daniel D, et al.
N Engl J Med. 2017 Nov 16;377(20):1919-1929. Epub 2017 Sep 8.
DOI: 10.1056/NEJMoa1709937
背景と目的
・III期非小細胞肺癌に対する標準治療は化学放射線治療であるが効果不十分
・化学療法治療後地固めとして Durvalumab(抗PD-L1抗体)の効果を検証
対象
III期非小細胞肺癌、n=713 (男女=500:213)、年齢 23-90歳、PS0-1、2014年5月- 2016年4月
方法
第3相ランダム化比較試験(年齢・性別・喫煙歴による層別化、例数 2:1 に割付)
・デュルバルマブ群 (n=476):化学放射線治療 + Durvalumab
・プラセボ群 (n=237):化学放射線治療 + Placebo
*同時併用化学療法 1回か2回(プラチナ製剤 + α)
** Durvalumab : 化学放射線治療後42日以内に開始、10mg/kg 隔週
評価項目と結果
Durvalumab (95%CI) |
Placebo (95%CI) |
Hazard Ratio (95%CI) |
p | |
主要評価項目 | ||||
Progression free survival (month) | 16.8 (13.0-18.1) |
5.6 (4.6-7.8) |
0.52 (0.42-0.65) |
<0.0001 |
Overall survival | - | - | ||
副次評価項目 | ||||
12-month PFS | 55.9% | 35.3% | ||
18-month PFS | 44.2% | 27.0% | ||
Objective Response Rate | 28.4% (24.3-32.9) |
16.0% (11.3-21.6) |
<0.0001 | |
Duration of response | - | <0.0001 | ||
Time to Death or Metastases | 23.2 | 14.6 | <0.0001 | |
safety | ||||
Grade 3-4 (any) | 29.9% | 26.1% | ||
Grade 3-4 (pneumonia) | 3.4% | 2.6% |
結論
中間解析において無増悪生存率は Durvalumab 群において有意に良好であった。(全生存率は評価中)
コメント
免疫チェックポイント阻害薬は現在5種類あって国内で承認されているのは抗PD-1 抗体薬のみということだ。そのふたつめの Pembrolizumab は 2017年2月に承認された。そしてPD-1 のリガンドである PD-L1 はT細胞、マクロファージ、血管内皮細胞、および腫瘍細胞など、多くの細胞表面に分布するらしい。
この薬剤 Durvalumab (商品名 IMFINZI: 国内未発売) は抗PD-L1 抗体で、2014年に始まった第3相試験(PACIFIC study)には 26か国が参加し 中間解析の結果が昨年9月の ESMO で発表された。
その有効性は明らかで、9月28日に NCCN ガイドラインに掲載されている。III期非小細胞肺癌の標準治療が変更されるとしたら 20年以上ぶりになるとのこと。確かにこの 「Figure 1.」を見たら、これほど隔たりがある生存率曲線を見るのは初めてかもしれない。
一方、放射線治療に関しては本文を読んでも「線量 54-66Gy」「V20<35%」と書いてあるだけで、なんだかさみしい。最終報告では、総線量の影響なども判明していないだろうか。
Evidence level Ib
PMID: 28885881
(近畿大奈良・岡嶋 馨)