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No.147
同側乳房・領域リンパ節再発後の予後:NSABP の5つの試験における初回 N0 症例の検討

Prognosis After Ipsilateral Breast Tumor Recurrence and Locoregional Recurrences in Patients Treated by Breast-Conserving Therapy in Five National Surgical Adjuvant Breast and Bowel Project Protocols of Node-Negative Breast Cancer.

Stewart J. Anderson, Dignam JJ, et al.
J Clin Oncol 27(15):2466-2473, 2009

はじめに

乳癌において乳房内再発や領域リンパ節再発は、遠隔再発や死亡のリスクを上げることが知られている。乳房内再発した症例の死亡のリスクは2.72~3.41倍に、領域リンパ節再発例では5.85倍に高くなることが示されている。初回治療時腋窩リンパ節転移陰性であった症例では転移陽性例に比べ局所領域リンパ節再発のリスクが低いため、局所領域リンパ節再発が遠隔転移や死亡のリスクをどれだけ上昇されるかに関しては不明な点がある。NSABPの5つの試験を用いて解析を行った。

対象および方法

NSABP B-13、B-14、B-19、B-20、B-23の5つのランダム化比較試験に登録された9,118症例のうち腋窩リンパ節転移陰性で、切除断端陰性、全乳房へ50Gyの照射が行われた3,799例を対象とした。49歳以下の症例が49.3%、60歳以上の症例が27.7%であった。平均の経過観察期間は16.1年であった。

患側乳房内再発は、照射された乳房、皮膚、実質からの再発とし、領域リンパ節再発や遠隔転移がないことと定義した。領域リンパ節再発は患側の傍胸骨リンパ節、鎖骨上窩、鎖骨下、腋窩リンパ節、乳房以外の胸壁の皮膚組織からの再発とした。

局所領域リンパ節再発(局所再発、または領域リンパ節再発)は、再発のイベントとして局所領域リンパ節再発が最初に生じた場合にカウントした(「遠隔転移後の局所領域リンパ節再発は含めていない」の意味であろう)。

結果

3,799例中342例(9.0%)に乳房内再発を、77例(2%)に領域リンパ節再発を認めた。乳房内再発は手術後から5年以内に127例(37.1%)で、また10年以内に233例(68.1%)で確認された。領域リンパ節再発は5年以内に56例(72.7%)で、また10年以内に71例(92.2%)で確認された。

若年者は乳房内再発(~49歳、50~59歳、60歳~;9.6%、5.8%、5.6%)が多かった。人種(黒人)は乳房内再発に関与していなかったが、領域リンパ節再発が多かった。

臨床的腫瘍径は乳房内再発に関与していなかったが、領域リンパ節再発に関与していた(p=.006)。逆に、病理学的腫瘍径は乳房内再発に関与しており(p=.003)、領域リンパ節再発には関与していなかった。ホルモン感受性(ER)は乳房内再発や領域リンパ節再発の頻度には関与していなかったが、ER陰性例では早期の乳房内再発やリンパ節再発が多かった。補助療法は乳房内再発の頻度に関与していたが(p<.0001)、領域リンパ節再発には関与していなかった。

乳房内再発後の5年遠隔転移非出現率(distant-disease-free interval)および生存率は66.9%および76.6%であった。領域リンパ節再発後の5年遠隔転移非出現率および生存率は27.8%および34.9%であり、乳房内再発例に比べ領域リンパ節再発例は予後が不良であった。乳房内再発はER陽性例(ハザード比:2.33)に比べER陰性例(4.49)において影響が大きかった。

死亡に与える影響を多変量解析した結果、年齢、人種、BMI、臨床的腫瘍径、病理学的腫瘍径が関与していた。同様の傾向は領域リンパ節再発例においても観察された。初回治療から再発までの期間が短いほど予後は不良であり、2年以内の領域リンパ節再発例の予後は特に不良で、再発後の5年生存率はわずか19.5%であった。

結論

初回治療時リンパ節転移が陰性であった症例では局所領域リンパ節再発は少ないものの、再発後の生存率や遠隔転移非出現率は不良であった。

コメント

初回治療時腋窩リンパ節陰性症例で局所再発した場合でも、病気は乳房内にとどまっておらず遠隔転移が生じる可能性がある一定の割合で存在していた。また領域リンパ節再発の予後はさらに不良であった。再発後の予後に与える因子として、再発部位の他、再発までの期間、年齢、人種、BMI、腫瘍径などがその後の治療成績に影響していた。このような再発例を治療するに当たっては予後が異なるさまざまな症例が含まれており、標準治療の確立はなかなか難しいものと思われた。


(鹿間 直人)

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