No.160
タンデム・オボイドアプリケータを用いたMRIガイドによる画像誘導腔内(± 組織内)照射
MRI-guided treatment-planning optimisation in intracavitary or combined intracavitary/interstitial PDR brachytherapy using tandem ovoid applicators in locally advanced cervical cancer
Ina M. Jurgenliemk-Schulz et. al.
Radiother Oncol. 93(2)::322-330, 2009
目的
MRIガイドの画像誘導腔内照射のDVHを用いた有効性の検討。および、タンデム・オボイドに組織内刺入孔を空けた新しいアプリケータの紹介とその有効性を報告する。
方法
2006.2-2007.12に、子宮頸癌Stage IB2-IVA 24人に化学放射線療法とPDRの腔内照射を行った。線量は、外照射との合計で、D90 HR-CTVが 80-84 Gy α/β10になるよう換算された。アプリケータはタンデム・オボイドで、オボイドにオリジナルの組織内刺入孔10箇所が用意された。
MRIを用いて輪郭をとり、(1) Manchester法に基づいたA点投与、(2)D90 HR-CTV > 処方線量、D2cc OAR < 目標値を目指して最適化、(3) ICBT+組織内刺入で、計画された。GEC-ESTROに準じCTV、直腸、膀胱、S状結腸 + 子宮に近傍の腸のDVHを計算した。
結果
治療計画(1)の場合、D90 HR CTV(目標80 Gy)では82±11 Gyが、(2)では80±9Gy。D2cc Bladder(目標 <90 Gyαβ3)}が 治療計画(1)の場合、90±17 Gyが、(2)では82±7Gy となった。
結果として、腔内照射のみの場合、CTVへの線量投与を確保しながらOARの線量を従来法以下・目標値以下に抑えることが出来た(特に膀胱に有効)。
組織内照射を併用した場合は、D90 HR CTV: 治療計画(1)(組織内刺入針を無視してタンデム・オボイドのみで計算)の場合(目標17 Gy/ fr.)、17±4 Gyが、(2)では16±5 Gy、そして組織内照射の治療計画(3)(目標 20 Gy/ fr.)では、21±2 Gy。D2cc Bowel: 治療計画(1)の場合、17±12Gyが、(2)では10±5 Gy、(3)では、10±6 Gy。
結果、OARへの線量(特に、膀胱・子宮近傍の腸)を維持しつつ、CTVへの線量投与を改善できた。
短期治療成績は、局所制御 23/24例、無病生存 22/24例であった。
結論
MRIガイドの画像誘導腔内照射は有用である。また、組織内照射を追加するとさらに改善する(特に、膀胱・子宮近傍の腸の線量の軽減)。
コメント
本論文は、ウィーンのPoetter等の主導で進んでいる画像誘導腔内照射の追跡研究であり、その有効性を追認するものです。
タンデム・オボイドアプリケータを使用し、さらにそこにユニークな組織内刺入孔が空けられている。これは、誰が刺しても簡単で再現性の高いものになっています。
しかしDiscussionの中で、組織内照射の意義について、「PoetterこそがBreak throughである」と絶賛し、過去に行われてきた通常の組織内照射(彼らは、pure interstitial BTと表現)を不安定なものであった、と切り捨てており不快 でした。現在、欧州で進められている画像誘導腔内照射というものは、CT・MRIを見て腔内照射の線量分布の不完全さがはっきりしてしまった現在、それでも高い実績を持つ腔内照射を補強するべく考案されたものです。
さらに、それでも足りないところ(特に、CTVが大きくなるほど組織内照射との差が目立ってくる)に、組織内照射の良いところを取り込んで、なおかつ腔内照射の持つ簡易性・再現性を落とさないようにした、というのが本質のように思います。
確かに再現性・簡易性には学ぶべき所はありますが、「Pure」組織内照射(多数のアプリケータをCTVの隅々に刺入し、一期的に数日連続で治療)が、他のいかなる放射線治療と比べても潜在能力が最も高い(より良い線量分布、総治療日数短縮)のは間違いありません。
今後、画像誘導腔内照射と組織内照射の長所をお互いに取り込む動きが進むと思われます。本邦は、この分野で力を出しやすい環境(RALS/MRIの普及率)にあり、世界に発信するべき点は多いと考えます。
(吉田 謙)