No.207
血清中のmiRNAを用いて肺癌化学放射線療法における重度放射線食道炎を予測する
Serum inflammatory miRNAs predict radiation esophagitis in patients receiving definitive radiochemotherapy for non-small cell lung cancer.
Xu T, Liao Z, O'Reilly MS, et al.
Radiotherapy and Oncology 2014 Dec;113(3):379-84
目的
肺癌の化学放射線療法におけるgrade3以上の放射線食道炎を予測するため、3つの血清中のmicroRNA発現変化を調べた。
対象と方法
2008年4月~2012年2月まで、MDACCにおいてNSCLCに対して化学放射線療法を受けた101例の患者について、治療開始前と治療開始後2週間以内(こちらは62例のみ採取)の血清を採取し、miR-155, 221, 21の3つのmiRNAの発現変化を調べ、MED(mean esophagus dose)やV50(50Gy以上照射された食道の体積割合)などのDVHパラメーターと放射線食道炎との関連を調べた。
結果
ロジスティック解析を用いた臨床的因子の分析では、病期Ⅰ~ⅢA期に比べⅢb+Ⅳ期で有意に放射線食道炎発症が高く、またMEDとV50も有意な放射線食道炎発症に関わる因子であった。
そこに生物学的因子として、血清中のmiRNA-155, 221, 21のmicroRNA発現を因子として加えた所、治療開始前のmiRNA発現レベルは有意な因子とはならなかったものの、照射開始後2週間のmiRNA-155, 221の高発現、およびmiRNA-221の治療開始前との発現変化が放射線食道炎発症に関わる有意な因子であった。
ROC解析を用いた放射線食道炎の予測は、V50のみを用いた場合にはAUC=0.84であったのに対し、そこにmiRNA-155, 221発現を加えた場合にはAUC=0.90と有意な改善が見られた。
結論
化学放射線療法開始後2週間の血清中miRNA-155, 221発現レベルの上昇は、放射線食道炎発症と関連し、早期に食道炎を予測するマーカーとなる可能性がある。
コメント
有害事象や治療効果の予測に関して、従来のDVHパラメーターでの予測に加えて、近年はマイクロRNAなどのバイオマーカーを加えての予測研究が盛んになってきている。
この研究は、V50などの臨床的因子に生物学的因子を加える事で予測精度が上がったとする報告である。しかし、治療開始前のmiRNA発現だけでは有害事象を予測できなかった事、約6割の患者からしか治療開始後2週間の血清が取得できていない事、またこのようなバイオマーカー研究に際しては、REMARK criteriaに従って、独立した検証群(Validation cohort)を設定して再現性を確認するのが常となってきているがそれが行なわれていない事など、不十分と思われる点もある。
臨床に役立つバイオマーカー研究の難しさを感じるが、何らかのブレークスルーとなる事に期待したい。
PMID: 25466375
evidence level:3
(札幌医科大学 染谷 正則)