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No.64
Ki-67の発現は前立腺癌患者で放射線治療及び抗男性ホルモン療法を受けている患者の遠隔転移と予後の強い予測因子である:RTOG トライアル92-02

Ki-67 staining is a strong predictor of distant metastasis and mortality for men with prostate cancer treated with radiotherapy plus androgen deprivation: Radiation Therapy Oncology Group Trial 92-02

Pollack A, et al.
J Clin Oncol 22:2133-2140, 2004

目的

Ki-67は細胞の増殖活性を示しており,これまでKi-67染色指数(staining index: Ki67-SI)は前立腺癌患者の予後と関連していた;しかし、放射線治療(RT)を受けている患者に関する研究はほとんど無い。そこで、ランダムに振り分けられた短期(short term)抗男性ホルモン療法(STAD)+RTと長期(long term)抗男性ホルモン療法(LTAD)+RTを受けている患者で、Ki67-SIと局所再発(LF)、生化学的再発(BF)、遠隔転移(DM)、原病死(CSD)、全死亡(OD)の関係を解析することを目的とした。

対象と方法

RTOG 92-02にエントリーして分析可能な前立腺患者1514名中、Ki67-SIの分析が可能な組織が得られた患者は537名(35.5%)であった。 257名はランダムにSTAD+RTに、280名はLTAD+RTに割り振られた。STADでは放射線治療前2ヶ月からホルモン療法を開始し、照射中もホルモン療法を継続する。抗男性ホルモン療法はflutamide(オダイン)750mg/day+LH-RHアゴニストの治療である。LTADでは始めの 4ヶ月の治療はSTADと同じであるが、RT終了後2年間LHRHアゴニストを継続する。RTは両群とも65-70Gy照射する。全骨盤へ 44-46Gy、さらに前立腺へ20-26Gyブーストする。観察中央値は96.3ヶ月であった。Ki-67の発現はMIB-1抗体を用いて免疫染色して、2000細胞中の陽性細胞数の%をKi67-SIとした。Ki67-SIのカットオフ値は3.5%と7.1%を用いて検討した。この値は以前の研究から提案された値である。Ki67-SIを連続変数としても検討した。

結果

Ki67-SIの中央値は6.5%(レンジ0%-58.2%)であった。本研究の分析対象のコホート(n=537)とRTOG92-02の他の患者(n=977)に関して、患者背景の分布に差はなかった。多変量解析の結果、連続データとして扱ったKi67-SIはLF (P=0.08)、BF(P=0.0445)、DM(P<0.0001)、CSD(P<0.0001)、およびOD(P=0.0094)と関連していた。Ki67-SIをカテゴリー変数として扱った場合、カットオフ値を3.5%とした場合は有意差を認めなかった。一方、カットオフを7.1%とした場合には、BF(P=0.09)、DM(P=0.0008)、CSD(P=0.017)のような関連性を認めた。Ki67-SIはDMとCSDと最も有意な相関を示した。可能性のある背景と治療方法の組み合わせによる遠隔転移のリスクを計算したところ、 LTAD+RTを行ったグループでiPSA<=30ng/ml、Gleason score 2-6、T2c、Ki67-SI<=7.1のDM の相対リスクを1.0としたとき、STAD+RTで同様の低いリスクとなるサブグループを予後良好群として抽出できた:(1)iPSA<=30ng/ml、 Gleason score 2-6、 T2c、 Ki67-SI <=7.1%、 (2)iPSA>30、 Gleason score 2-6、 T2c、 Ki67-SI<=7.1、 (3)iPSA<=30、 Gleason score 7-10、 T2c、 Ki67-SI<=7.1%、 (4)iPSA>30、 Gleason score 7-10、 T2c、 Ki67-SI<=7.1。

結論

Ki67-SIはDMとCSDを決定する最も重要な因子であり、ODとも関連していた。Ki67-SIは今後のトライアルの層別化に考慮すべきで因子である。

コメント

細胞の増殖活性を示すKi-67はMIB-1抗体を用いて免疫組織学的に知ることができる。前立腺癌は増殖活性が旺盛な癌ではなく、Ki67-SIは低い傾向にある。この研究では、増殖活性を7.1%と高い値をカットオフ値に設定した結果、遠隔転移と原病死の予後因子としてクローズアップしてきた。また、長期の抗男性ホルモン療法では様々な肉体的、精神的副作用が生じるが、Ki67-SI<=7.1%のサブグループでは短期のホルモン療法でも予後に代わりがないことが示されたことは意義深い。


(関根 広)

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