No.164
背臥位と腹臥位での前立腺のintrafractionの動きに関する前向き研究
prospective study of intrafraction prostate motion in the prone vs. supine position Wilder RB, Chittenden L, Mesa AV, et al.
A prospective study of intrafraction prostate motion in the prone vs. supine position Wilder RB, Chittenden L, Mesa AV, et al.
Int J Radiat Oncol Biol Phys 77(1): 165-70, 2010.
はじめに
オンラインでの画像誘導下放射線治療が行われるようになり、interfractionの標的のずれを正確に把握できPTVマージンを小さくした治療が可能となってきた。その一方で、ターゲットのintrafractionの動きを把握することがより重要となっている。
方法
15例の前立腺癌の患者を対象とし、高線量率の組織内照射(22Gy/4回)後IMRT(50.4Gy/28回)を施行した。
背臥位および腹臥位で固定具を作成し、バリアン社製On-Board Imagerで前立腺に刺入されたシードの位置を正面側面の撮影で、IMRT開始の最初の5日間連続して前立腺の位置を測定した。実際のIMRTの照射を腹臥位で行い、治療開始前と後に前立腺の位置を測定し、照射後すぐに、背臥位にして直後と11分後の二回測定した。
結果
intrafractionの前立腺の動き(平均±標準偏差)は、腹臥位および背臥位で、前後方向2.1±1.2mm、1.7mm±1.4mm(p=0.47)、頭尾方向2.2mm±2.0mm、1.6mm±1.8mm(p=0.16)、左右方向1.0mm±1.2mm、0.6±0.9mm(p=0.03)であった。
腹臥位では前方方向へ、背臥位では背側方向へ前立腺がずれる傾向にあった。患者の多く(80%)がアンケート調査で腹臥位より背臥位の方が楽な姿勢であると答えていた。
結論
腹臥位でも背臥位でも頭尾方向、前後方向に平均で約2mmの前立腺のintrafractionの動きがあるが、両者に差は見られなかった。
コメント
個人的にはこの領域の論文は苦手分野ですが、自分の臨床を三次元照射からIMRTやIGRTへと進めて行くには避けては通れないと思い少しずつチャレンジしています。intrafractionの前立腺の動きを治療前と後の二回測定するだけでよいのか気になりましたが、考察でもそのことが取り上げられており、呼吸性移動やリアルタイムでの動きを追跡した報告(Calypsoを用いた報告)などを考えるともう少し大きなintrafractionの動きが実際にはあるように思われます。
あと一つ、「なるほど」と思えたことは、いくつかのIMRTの報告で患者一人あたりに要する照射時間が短い照射方法が重視されているようですが、より多くの患者を治療するという経済的なことが主な要因と思っていましたが、照射時間を短くすることでintrafractionの動きを少なくすることができる可能性があるとのことでした。すでにご存じの方が多いのでしょうが、お恥ずかしながらはじめて知りました。
(信州大学医学部 鹿間 直人)