No.117
IMRTの品質保証におけるフィルム測定法と2次元半導体検出器の相互比較
An intercomparison between film dosimetry and diode matrix for IMRT quality assurance
Buonamici FB, Compagnucci A, Marrazzo L, et al.
Med.Phys. 34(4):1372-9, 2007
背景
現在、IMRTの品質保証(QA)では測定値と治療計画装置での計算値の一致評価が重要視されている。特に空間分解能に秀でたフィルム法は広く採用されている。しかしながら、フィルム法での線量分布検証は時間がかかり、絶対線量評価も同時に行う場合は細心の注意が必要となる。また、絶対線量評価をフィルム法で行わない場合はイオンチェンバーを用いた絶対線量評価を別途行う必要がある。そこで、ルーチンのIMRT・QA作業をより簡略化可能であろう2次元半導体検出器が代用できるのかを検証し報告する。
内容
当院ではNuclear製2次元半導体検出器MapCHECKをルーチンQAに採用している。特徴としては直線性、再現性に優れ線量率には依存しない。しかし配列している半導体検出器の数に限度があり空間分解能が低い。本研究の目的はQA作業におけるフィルム法とMapCHECKの性能比較とその相違点の原因究明である。結果としては測定値と治療計画装置での計算値の平均線量誤差を評価した場合、双方とも0.2%以内と両法とも大変すばらしい一致を示した。また、線量分布比較においてはγ値のBland-Aitman解析によればMapCHECKの方がフィルム法よりも治療計画装置で計算された線量分布との一致度はわずかながら良い結果が得られた(γ値1以下を満たす点の割合は平均で96%と94%であった)。この相違はフィールドサンプリングの相違に依存するのではなく検出器特性に依存していると考える。その上で、2次元半導体検出器は最終的にフィルム法と同等の誤差範囲で測定できると考えている。我々の結論としては、事実上、2次元半導体検出器はIMRT・QAにおいてフィルム法による線量分布評価とイオンチェンバーによる絶対線量評価の双方に取って代われるであろうと考える。
結論
低線量域において、絶対線量の一致評価とγ値を用いた線量分布評価を行ったが、結果は2法ともとても近接した結果であった。フィルム法よりもMapCHECKのほうが、僅かながら計算値により良く一致していた。その理由に関してははっきりしないが、各検出方法の異なる線量測定特性や統計誤差に依存しているのではないだろうか。よって、MapCHECKはルーチンIMRT・QAにおいて使用可能でありフィルム法に代用できると考える。また、絶対線量の測定器としてMapCHECKを用いることで、相対線量評価法としてフィルムを使用することや時間のかかるイオンチェンバーによる絶対線量測定を避ける事ができる。
コメント
MapCHECKの臨床使用は可能であるが間違ったサンプリング結果を導く可能性のある半導体間の非常に大きな線量差や大きな非対称フィールドに対しMapCHECKを用いる場合は、注意深い解析が必要である。また、MapCHECKをアイソセンターから中心半導体を離すように設置することでサンプリング影響が解消される方法も考えられているが、充分な性能評価を以後行うべきであろう。
(奥村 雅彦)