No. 240
骨盤部IMRT期間中における患者報告有害事象
NRG Oncology-RTOG1203 Patient-Reported Toxicity During Pelvic Intensity-Modulated Radiation
Therapy: NRG Oncology?RTOG 1203
Klopp AH Yeung AR, Deshmukh S, et al.
Journal of Clinical Oncology 36:2538-2544. 2018
doi: 10.1200/JCO.2017.77.4273.
目的
臨床試験:NRG Oncology-RTOG1203は子宮頚癌/体癌の女性を対象とし、患者主観による急性障害と健康関連QOLに関して、IMRTと従来の骨盤部放射線治療を比較する目的で実施された。
方法
患者は無作為に標準的な4門照射群(RT)とIMRT群に割り付けられた。主要評価項目は、放射線治療終了までの患者主観による消化管における急性期有害事象でEPIC(Expanded Prostate Cancer Composite)の消化管領域に基づいて評価された。副次的評価項目は尿路系有害事象・消化管有害事象の変化で、患者主観による有害事象やQOL評価(FACT-Cx,PRO-CTCAE)を行った。
結果
2012年から2015年まで289症例が登録され、278例が評価可能であった。通常状態から放射線治療終了時まで、平均のEPIC消化管スコアはRT群で-23.6ポイント、IMRT群では-18.6ポイントであった(低い方が悪い;p=0.048)。EPIC泌尿器スコアはRT群で-10.4ポイントに対してIMRT群で-5.6ポイント(p=0.03)、平均TOI (Trial Outcome Index)スコアはRT群で-12.8ポイントに対してIMRT群で-8.8ポイントであった(p=0.06)。放射線治療終了時、RT群の51.9%,IMRT群の33.7%は頻回の下痢症状を呈していた(p=0.01)。そして、RT群の方が1日4回以上の止痢剤の内服を必要とする症例が多かった (20.4% vs 7.8%; p=0.04)。
結論
骨盤部IMRTは従来の骨盤部4門照射に比べ、患者主観的評価において消化管有害事象と泌尿器有害事象が有意に少なかった。
コメント
過去においては臨床試験における評価項目は生存率、原病生存率や局所制御率などが主要であったが、近年になり有害事象の減少や患者QOLというものの重要性が再認識されつつある。また、以前は患者主観による評価は“客観性が乏しい”とされメジャーな学術誌への掲載は困難な状況であったが、臨床試験として適正に実施された結果報告は一流誌の掲載も増加傾向にある。そしてこのような傾向は生存率を改善するだけの医療ではなく、治療を受ける患者さんの有害事象を減らしより苦痛の少ない治療を目指し、医療の主役は医療者でなく患者であるという認識を反映した流れと考えられる。
研究対象となったのはIMRTであるが、過去においては一例治療計画を作成するのにも数時間?丸1日以上の時間を要し、ありふれた全骨盤照射に用いられるものではなかった。しかし、近年においては治療計画装置の性能も飛躍的に進歩し物理士の増加という背景と共に、多くの施設でより簡便に高精度なIMRTを実施することが可能となっている。全骨盤照射のような普遍的な治療でもIMRTによって患者に確実に恩恵があることを患者主観型エビデンスとして示した研究論文である。IMRTが実施可能な機器は増えているが施設基準によって事実上実施できない施設も多く、IMRTは一般的な治療症例にも明らかに優位性が認められるため、規制緩和や普及推進が望まれ、その一助となる研究報告と考えられる。
Evidence Level Ib
PMID:29989857
(野宮 琢磨)