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公益社団法人日本放射線腫瘍学会

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No.58
高額な診療報酬が支払われるためにIMRTは過度に利用されてはいないか

IMRT may be used to excess because of its higher reimbursement from Medicare

BR Paliwal, et al.
Medical Physics 31(1):1-3, 2004

IMRTには通常の放射線治療に比較して高額な診療報酬が支払われている。故に、IMRTは放射線治療の改善をもたらすと、正当化される範囲以上に拡大使用されているのではないか、との疑問が起きている。一方では、IMRTは根治可能な放射線治療対象患者の全てに対して改善された放射線治療を提供している、との指摘もある。

Dr. Paliwal (University of Wisconsin)は慎重派として、 Dr. Brezovich (University of Alabama)は擁護派としてそれぞれの見解を述べている。

以下に慎重派のDr. Paliwalの意見を紹介する。

  • 先進技術のIMRTでは通常の放射線治療では不可能だった投与線量のconformityを正確に達成でき、より高い線量を投与出来るようになった。
  • IMRTを実施するには多くの人、機器、時間を必要とするので高額な診療報酬が支払われるべき。
  • IMRTは放射線の対腫瘍効果を根本的に改善するものではない。線量投与の手法を変えただけである。
  • IMRTは局所制御率で評価されるべきである。もし、通常の放射線治療に比較して大きな改善が無いのであれば資源の無駄遣いである。
  • IMRTはtargetを正確に描くことを前提にしているが、現在の技術で可能なのか。独断的にtargetが決定されていないと言えるのか。
  • IMRTは患者全身の総線量を増加させてはいないのか。
  • IMRTに対する高額な診療報酬の故、新規参入組み、特に小規模施設においてはIMRTを過度に実施していることは無いのか。
  • 正常組織の温存を考慮しない放射線治療はIMRTの対象ではない。
  • 一般的に放射線治療患者の50%に根治治療実施している。IMRTの対象患者は根治治療患者の約20%と見積もっている。

日本ではいまだIMRTに対する診療報酬が決定されていないが、一方、定位放射線治療は適応を拡大している。同様の議論が日本でも広く行われることになるだろう。


(芦野 靖夫)