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公益社団法人日本放射線腫瘍学会

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No.65
深部の標的体積に対する光子IMRT施行時のエネルギーと門数の影響

The effect of beam energy and number of fields on photon-based IMRT for deep-seated targets.

Pirzkall A, et al.
Int J Radiat Oncol Biol Phys. 53:434-442, 2002

例えば前立腺のように、体の深部にある標的体積に対しては、対向2門照射などの場合10MV以上の高いエネルギーのX線を用いると皮膚線量の低下、表面近くの高線量領域の防止に有用であり推奨されている。
一方Conformal RT、 IMRTでは門数が多く、集光性が高いため、高いエネルギーのビルドアップや低減衰の効果は薄れる可能性があるとされる。
この論文は、前立腺の場合を例にとり、エネルギーと門数を変化させてIMRT施行時のターゲット以外への線量の影響を定量的に解析したものである。10人の前立腺癌患者データにおいてエネルギー6、10、18MV、および4、6、9、11門のビームでIMRTの治療計画を試みた。標的体積の95%をおおう線量で正規化して比較した。標的体積および近傍のOrgan at Riskではエネルギーの違いの差はあまり無かった。
しかし、標的体積から離れた領域では線量分布は違っており、照射門数が増えエネルギーが高い程、高線量領域が狭くなる。結論として9-11門であればエネルギーの違いはない。18MVの場合、6門でも比較的良好である。10MVでは6門で許容可能であるが、6MVでは9門以上で許容可能であるとしている。特に低いエネルギーで半影が少ないためConformityが改善するという報告もあるが、彼らの結果ではその傾向はなかった。

コメント

一般に多門照射、IMRTではエネルギーの利得は減少してあまり差が無くなるとされている。著者らの解析結果では、確かに浅い線量は増加するので高いエネルギーが好ましいとしているが、実際にはその差はわずかであるように思える。Prescribed doseの50%領域でのconformity index (50%領域体積/標的体積)で比較した場合、6門で6、10、18MVのconformity indexはそれぞれ7、8、9程度である。70%でのconformity indexは差が無いといってよい。従って可能であれば高いエネルギーが好ましいが、IMRTでは対向2門、4門照射ほどの影響がないのでメリットは少ないように思える。


(国枝 悦夫)

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