No.54
局所進行膵臓癌に対する同時化学・放射線療法:GEMと5-FUとの無作為比較試験
Concurrent chemoradiotherapy treatment of locally advanced pancreatic cancer: Gemcitabine versus 5-fluorouracil, a randomized controlled study.
Li CP, et al.
Int J Radiat Oncol Biol Phys. 57:98-104, 2003
背景
Gemcitabine (GEM)は膵臓癌に対して第一選択の抗癌剤として推奨され、5-FUに比べて生存率の改善が認められている。GEMは放射線増感作用も注目されているが、現在の標準的治療とされる5-FU併用の化学・放射線療法に比べてGEM併用の方が優れているか否かはまだ不明である。この論文は、GEMと5-FUの同時併用放射線療法の効果と耐容性を比べた結果である。
目的
局所進行膵臓癌に対する同時化学・放射線療法で、GEM併用群と5-FU併用群で無作為臨床比較試験を行い、その有効性と耐容性を比較する。
対象と方法
対象は局所進行膵臓癌34例で、化学療法は18例にはGEM、16例には5-FUが投与された。5-FUは放射線治療期間中に500mg/m2/日を最初の3日間、その後は隔週で計6週間投与された。GEM は放射線治療期間中600mg/m2を週1回、6週間投与された。放射線治療は3D-CRTにて行われ、1.8Gy/日、計50.4-61.2Gyが照射された。GTVに領域リンパ節と1.5-2.5cmを加えた範囲で45Gyを、5.4-16.2GyをGTVに1cmを加えた照射野で追加照射された。肝臓は30Gy以下、腎臓は20Gy以下、脊髄は40Gy以下となった。
結果
中間生存月数ではGEM群14.5ヶ月、5-FU群6.7ヶ月(p=0.027)、局所の奏効率ではGEM群50%(CR4, PR5)、5-FU群13%(PR2)でp=0.005、疼痛制御率ではGEM群39%、5-FU群6%(p=0.043)とGEM群が優れていた。副作用ではGrade3-4の骨髄抑制、血小板減少、悪心、嘔吐、生存期間中の入院率、放射線治療完遂率では有意差は認めなかった。
結論
GEMとの同時併用放射線療法は 5-FUの同時併用放射線療法と比べて、より有効であり耐容性は 5-FU群に匹敵できる。
局所進行膵臓癌では術中照射と同時化学・放射線療法が行われることが多い。このGEMを用いた同時併用放射線療法の結果は、同じ東洋人を対象とした台湾からの治療成績であり、耐容性においても参考になると思われる。
(寺嶋 廣美)