No.168
局所進行子宮頸癌患者に対するFDG-PETガイド下IMRTの臨床結果
Clinical outcomes of definitive intensity-modulated radiation therapy with fluorodeoxyglucose-positron emission tomography simulation in patients with locally advanced cervical cancer.
Kidd EA, Siegel BA, Dehdashti F, et al.
Int J Radiat Oncol Biol Phys. 77(4):1085-91, 2010.
目的
子宮頸癌に対するIMRTでの治療報告は少ない。FDG-PET CTガイド下のIMRTにより治療された局所進行子宮頸癌患者の合併症と治療成績を評価する。
方法
1997年1月~2008年9月に根治的放射線治療が行われた452名を対象とした。2005年3月までは317名が非IMRTで治療され(以下 非IMRT群)、2005年3月以降は135名がFDG-PET CTガイド下IMRTで治療された(以下IMRT群)。FDG-PETは全患者に行なわれた。IMRT群ではさらにFDG-PET/CT simulationが施行された。40%の閾値体積を代謝活性のある原発頸部腫瘍(MTV cervix)として定義した。
CTV nodalは血管から7mmマージン、PTV finalとしてCTV nodalからさらに7mmマージンを加えた。IMRT計画の処方線量はPTV finalに対し50.4Gy、MTV cervixに20Gyとした。PTV finalにおいて体積の100%に処方線量の95%線量が投与され、処方線量の110%線量が投与される体積が最小になるように最適化が行なわれた。正常組織の線量制約は、30Gy以上投与される腸管体積は40%未満、40Gy以上投与される直腸体積は40%未満、40Gy以上投与される骨盤骨体積は40%未満、30Gy以上投与される大腿骨頭体積は40%未満とした。
CDDPの同時併用は85%(IMRT群:83%、非IMRT群:89%)に行われた。IMRT群の全てでIr-192のHDR-ICBTを、6.5Gy (A点)、週1回、計6回施行された。非IMRT群では、60%がHDR-ICBT、40%はCs-137によるLDR-ICBTが行われた。
結果
非IMRT群とIMRT群とで、進行期、組織型、リンパ節転移に差がなかった。RT終了後の3ヶ月後に全体の80%の患者にFDG-PETが行なわれ、再発なし、残存、新規FDG集積は非IMRT群/IMRT群でそれぞれ73%/74%、14%/14%、13%/12%だった。
FDG-PETでみられた残存病変や新規病変は、全再発リスク(P<0.0001)と原病生存率(P<0.0001)と有意に相関していた。
全患者の平均経過観察期間は、52か月(非IMRT群:72ヶ月、IMRT群 : 22ヶ月)であった。非IMRT群で139例、IMRT群で39例の計178例の再発が認められた 。多くは遠隔転移であり骨盤内再発のみは10%以下であった。無再発生存率に両群間では有意差はなかった(P=0.0738)。28例(IMRT:4、非IMRT:24)は原病死、4例(IMRT群:1、非IMRT群:3)は治療関連合併症死だった。またIMRT群で化学療法関連死があり、非IMRT群ではgrade3以上の腸管合併症で3例の死亡があった。 IMRT群の原病生存率(P<0.0001)と全生存率(P<0.0001)は、非IMRT群と比較して有意に良好であった。
観察期間終了時で、62例(IMRT群:8例、非IMRT群:54例)がgrade3以上の消化器または泌尿器系の合併症を生じたが、 IMRT群は有意に低頻度であった(p =0.0351)。
結論
子宮頸癌に対するFDG-PET CTガイド下のIMRTは、合併症を軽減し、治療成績を向上させた。
コメント
本研究では、子宮頸癌の根治的放射線治療において、IMRTにより合併症が著しく軽減していることが示された。本邦では子宮頸癌のIMRTの得失について懐疑的な意見が少なくないが、このような結果を受けて日本でも取り組みが進んでいくことを期待したい。IMRTは不適切な施行により、病変への線量が不足し治療成績が低下する危険がある。
しかし本論文のようにFDG-PET CTを用いるなどで適正なCTVを設定することにより治療成績を損なうことが避けられそうである(本研究では意外にも治療成績も有意に向上していた)。FDG-PETの集積範囲とCTで判断されるCTVの差が定量的に検討され、具体的にどの程度マージンが必要かまで論じてあると、PET-CTのない施設でも参考となるデータになり得たと考えられる。
子宮頸癌に対するIMRTの適応拡大に向けて、今後PETガイド下での定量的な有効性や、この論文の著者自身も違和感を持っていたIMRTでの治療成績向上の可能性について、追試していく必要があるだろう。
(琉球大学、粕谷 吾朗、有賀 拓郎、戸板 孝文)