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公益社団法人日本放射線腫瘍学会

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No.183
食道癌に対する化学放射線療法後の症候性心毒性発症はFDG-PETで評価した心筋活動性の変化ではなく線量及び患者因子によって予測される

Symptomatic cardiac toxicity is predicted by dosimetric and patient factors rather than changes in 18F-FDG PET determination of myocardial activity after chemoradiotherapy for esophageal cancer

Konski A, Li T, Christensen M, et al.
Radiother Oncol 104:72-77,2012.

目的

食道癌に対する化学放射線療法後の症候性心毒性発症に関わる因子を決定すること。

方法

2002~2007年に根治的な化学放射線療法+/-手術を施行した食道癌患者74症例(年齢中央値62、男性65例、腺癌65例)を対象に、Vdose(10~50,心臓全体と左室)等の治療因子および患者因子と心臓晩期有害事象発症との相関、53例では治療前後におけるFDG-PETでの心中隔、心尖、側壁のSUVmaxの変化と有害事象の発症、年齢、喫煙、基礎疾患、バイパスや血管形成の既往など患者因子との相関について検討。
PTVはGTVに頭尾側3.5 cm, 側方1.0 cmのマージンをつけたCTVに1.5 cmのマージンをとったものとし、PTV辺縁に対して1回線量1.8Gyで総線量は45-57.6Gy(中央値50.4Gy)。化学療法はCDDPを主体に5-FU, paclitaxelなど。
治療終了からPETまでの期間は中央値25日。

結果

心臓晩期有害事象発症は無症候性の心嚢液水貯留6例を含む12例。
有症候性6例は心嚢液水4例、心筋梗塞1例、洞不全症候群1例で発症までの期間は8.3カ月。
12カ月の時点でのRTOGあるいはCTCAE v3.0でG3以上の有症候性晩期有害事象発症率は8.5%。
心臓全体のV20, V30, V40は有症候性の有害事象発症の有無に影響し、発症ありvs.なしで各々の平均V20は79.7% vs. 67.2%(p=0.05)、V30は75.8% vs. 61.9%(p=0.04), V40で69.2% vs. 53.8% (p=0.03)。V20, V30, V40がそれぞれ70%, 65%, 60%を超えると有症候性の有害事象が14%, 14%, 15%発症し、それ以下の場合は発症なしであった。
左室のみのVdoseは有害事象発症と相関せず、患者因子も影響なし。
SUVmaxの変化は側壁で中央値-18%と有意に低下したが、他の患者因子や有害事象発症とは相関なし。

結論

有症候性心臓有害事象発症の有無で心臓全体のV20, V30, V40に差がみられた。
左室のVdoseやFDG-PETでのSUVmaxは有症候性有害事象の発症に影響しなかった。

コメント

心臓の線量制約は疾患や照射方法により多様である。
乳腺の通常分割ではV25<10%で15年後のcardiac mortality<1%(QUANTEC)、肺癌(RTOG0617)ではV45<67%,v60<33%などが示されているが、冠動脈、心筋、弁、伝導系など直列臓器としての心臓晩期障害の予測はVdoseのみでは不十分であろう。
呼吸・拍動による動きの考慮や心筋あるいは心膜のcontouring方法、軽症や無症候性の心嚢液水貯留の意義と扱いなど報告による相違がある。
期待される予後によっても晩期有害事象発症率のもつ意味は異なる。
放射線による晩期の心毒性に関しては詳細な総説も多く参考にしたいところである。


(千葉大・宇野 隆)

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