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No.165
限局型小細胞肺癌症例でのFDG-PET陽性リンパ節への選択的放射線照射の安全性・妥 当性の前向き研究

Selective nodal irradiation on basis of (18)FDG-PET scans in limited-disease small-cell lung cancer: a prospective study.

Selective nodal irradiation on basis of (18)FDG-PET scans in limited-disease small-cell lung cancer: a prospective study.

van Loon J, De Ruysscher D, Wanders R, et al.

Int J Radiation Oncology Biol Phys, 77(2): 329-36, 2010.

背景と目的

限局型小細胞肺癌(LD-SCLC)症例に対する、標準的な化学放射線療法後の局所再発率は30%程度とされる。病変部へ安全に線量増加を行うためには、リンパ節予防照射領域の省略が選択肢の一つであるが、CTで診断した転移リンパ節のみを照射領域とした場合、照射野外のリンパ節単独再発が11%と認容出来ないレベルであった。FDG-PETにて転移リンパ節を診断し、選択的放射線照射を行った場合の安全性・妥当性について検討した。

対象と方法

2004年から2006年にMaastro Clinicへ根治照射目的に紹介されたstageⅠ-Ⅲ(T4症例は除く)のLD-SCLC患者60人を前向きに検討した。

治療は放射線療法(加速分割照射45Gy/30Fr)と同時併用化学療法(CBDCA + VP-16)にて行い、放射線治療は予防照射領域を省略し、原発巣とFDG-PET陽性のリンパ節をGTVとした。

CTV marginは5mm、PTV marginはリンパ節では5mm、原発巣では10mm。

診断用CTにて横径1cm以上のリンパ節をCT陽性リンパ節とし、PET陽性リンパ節と比較した。

primary endpointは照射野外の領域内リンパ節単独再発。

Secondary endpointは、再発形式と食道および肺の有害事象。

結果

CT-baseとPET-baseでリンパ節のstagingが異なった症例が30%で、CT-baseと比較してPET-baseにて陽性リンパ節が増えた症例が15%、減った症例が13%であった。

経過観察期間は18.5±10.3ヶ月(3-52ヶ月)。

39症例(65%)に再発を認めた。照射野外の領域内リンパ節単独再発は2例(3%)に認め、いずれもCT陰性リンパ節であった。照射野内外に及ぶリンパ節再発は5例(8%)。再発例の87%に遠隔転移を認めた。

全生存期間の中央値は19ヶ月、2年全生存率は35%、無増悪生存期間は14ヶ月、2年無増悪生存率は17%。有害事象は、Grade3の咳嗽が1例、Grade3の呼吸困難が2例、Grade3の食道炎が12%であった。

考察と結論

非小細胞肺癌症例を対象に行われた同様の検討では、領域リンパ節単独再発率が2%であり、本検討は遜色無い結果(領域リンパ節単独再発率3%)となった。LD-SCLCに対するPET-baseの選択的放射線照射は安全かつ妥当な治療と考える。

Grade3の食道炎発生率(12%)は、予防照射領域を含めた放射線治療やCT-baseで選択的放射線治療を行った予備検討での発生率(30%)と比較して低かったが、CT-baseと比較してPET-baseで照射野が拡大した症例と縮小した症例がほぼ同数であり、照射野の違いが原因ではないと考えられた。

コメント

局所進行非小細胞肺癌ではCT-baseと比較してPET-baseの選択的放射線治療で、リスク臓器への線量を変えずに病変部への線量増加が得られたとのplanning studyがあり(Radiother Oncol 2005 Oct;77:5)、小細胞肺癌でも同様のことが期待できると想定されています。

そもそも治療前にFDG-PETを施行することの意味合いはより正確なstagingにあります。FGD-PETを加えることで、8.3%の症例でLD-SCLCからED-SCLCへ正しくup-stageされ、29%の症例で新たな転移リンパ節が同定され照射野が拡大したとの報告があります(J Clin Oncol2004;22:3248)。FDG-PETを施行することで照射野を縮小できる症例がどの程度あるかは不明ですが、治療開始前に可能な限り施行すべき検査である事は間違いないと思われます。

照射野外単独再発が少ないのは、それだけ現在の治療法では、局所領域再発や遠隔転移が多いということでもあります。今後、線量増加や併用化学療法の改良により治療成績が向上した場合には、再検証されるべきとも思われます。


(九州大学 浅井 佳央里・塩山 善之)

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