No.100
ダイナミック強度変調照射の検証におけるアモルファスシリコンEPIDの線量検証
Dosimetric properties of an amorphous silicon electronic portal imaging device for verification of dynamic intensity modulated radiation therapy
Peter B.Greer, Carmen C. Popescu
Med. Phys. 30(7):1618-1627, 2003
背景
IMRTにおける線量検証は、治療計画上の計算とファントムをセットした実測との比較を行っている。しかし、この方法はファントムの設置やその後の計算値との比較に多くの時間を費やす。近年、アモルファスシリコン用いたフラットパネルEPIDを用いたDynamic MLC-IMRTの検証が検討されている。本研究では、アモルファスシリコンEPIDの諸特性について報告する。
方法・使用機器
アモルファスシリコンEPIDは、Varian社製のaS500で、前面に1mm銅が設置されている。その下には蛍光体(KODAK Lanex Fast B)がある。検討項目は、キャリブレーション時のビルドアップ材の影響、線量直線性、出力係数、フレーム数え落とし、MLCスピードに対する追従性、残像(メモリテスト)、線量率依存性、wedgeならびにダイナミック照射の線量検証について行った。
結果
このEPIDは、線量、線量率、2.5cm/s以上のMLCスピードに対する応答は、直線的であった。出力係数の照射野依存性は、電離箱線量計との比較において、10×10cm照射野(1.5cm深)で正規化した場合、電離箱に比べて-2%(4×4cm)から+2.5%(24×24cm)であった。1ヶ月間におけるIMRT測定での再現性は、0.8%以内の偏差であった。フレーム取り込みにおけるdead time(数え落とし)は、最大で20%以上あった(MLCスピードが1cm/sで1cm leaf gapにおけるDMLCの場合)。EPID測定精度は、キャリブレーション時に用いられる入力値(線量プロファイル)に依存することがわかった。
結論
アモルファスシリコンEPIDは、IMRTの線量検証に使用する事は可能である。現在の主なる問題点は、フレーム取り込みにおけるdead timeである。
コメント
本論文に使用されたaS500は国内においても現在使用されており、新機種としてaS1000が2年前に登場した。現在の照射装置には、本来の目的である照射部位照合のためEPIDを搭載されている。また、近年主流となっているアモルファスシリコンを用いたEPIDは、感度や解像度の向上により、本論文のように装置のQAにも利用が可能となってきた。しかし、使用するには、EPIDシステムの特性を把握する必要があり、本論文はその一助となる。ここで問題となっているdead timeについては、EPIDハードウェアーの改良に伴いかなり改善されているとの報告もある。
(奥村 雅彦)