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公益社団法人日本放射線腫瘍学会

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No.57
EGFRおよび VEGFが高発現している子宮頸癌患者は放射線治療後の生存期間が短い

Epidermal growth factor receptor (EGFR) and vascular endothelial growth factor (VEGF) negatively affect overall survival in carcinoma of the cervix treated with radiotherapy

Gaffney DK, et al.
Int J Radiat Oncol Biol Phys. 56:922-928, 2003

目的

この研究の目的は、子宮頸癌において多くの生物マーカーから、病状、放射線治療感受性および新しい治療戦略の可能性を探ることである。

方法

子宮頸癌IB-IVA期の根治放射線治療施行患者で腫瘍組織採取ができた55人について解析した。臨床因子と病状について検討した。EGFR、VEGF、 CD34、topo-II、COX-2の蛋白発現は免疫組織化学染色にて検出した。無病生存(DFS)と全生存(OS)について単変量および多変量Cox 比例ハザードモデルを用いて解析した。生物マーカーは予後予知因子の可能性について評価した。

結果

根治放射線治療を施行した子宮頸癌患者55人において、DFSに対する単変量解析では病期のみで関連性が示された(p<0.0001)。単変量解析において、FIGO病期(p<0.0001)とEGFRの膜部分の染色像(p<0.037)はOSの短縮を示した。DFSに対する多変量解析では、COX-2、VEGFと病期で関連性が示され(p=0.012、p=0.014、p=0.03)、COX-2、VEGF高発現症例は予後不良であった。OSに対する多変量解析では、VEGFとEGFRおよび FIGO病期が顕著であった(p=0.005、p=0.011、p<0.0001)。VEGFとCD34(p=0.04)、COX-2とtopo-II(p=0.04)、COX-2と分化度(p=0.04)、腫瘍サイズと病期(p=0.04)間で顕著な関連性が確認された。

結論

多変量解析によってVEGFとCOX-2の高発現は短いDFSを、VEGFとEGFRは死亡率の上昇を識別した。VEGFとCD34の間の顕著な関連性は血管新生の過程を想像させる。Topo-IIは増殖マーカーでありCOX-2と直接的に関連した。COX-2の発現は増殖分画の大きい腫瘍で大きい。 EGFR、VEGFおよびCOX-2の高発現は子宮頸癌患者で予後の悪いグループで見られた。これらの結果は子宮頸癌においてこれらのタンパク質が予後予知因子となる可能性を示した。

COX-2が前癌組織や癌組織で強発現しており、発癌性および癌の悪性度(増殖速度、転移性)と関係があること、さらにCOX-2の特異的阻害剤によるCOX-2酵素阻害は、発癌リスクを減少させ、腫瘍増殖抑制、さらに正常組織の放射線感受性に影響を与えずに腫瘍の放射線感受性を高めることが報告されています。COX-2阻害剤であるcelecoxib(Celebrex)は、現在、放射線治療または化学療法との併用で臨床試験が進行中であり、今後の報告を大いに期待したいものです。


(村山 千恵子)

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