No.134
CT、MRIを用いた子宮頸癌・腔内照射における輪郭描出について:前向き試験結果ならびに標準的は輪郭描出に関する予備的ガイドライン
Viswanathan AN, Dimopolos J, Kirisits C, Berger D, Potter R
Int J Radiat Oncol Biol Phys. 68(2):491-498, 2007
目的
子宮頸癌の腔内照射においてCT、MRIを用いた場合の腫瘍ならびにOAR(リスク臓器)の輪郭描出、DVHの比較検討を行う。その上でGEC-ESTROの基準(MRI)に基づいて行われる、CTを用いた輪郭描出の妥当性を検証した。
方法
アプリケーター(tandem+ring applicator)挿入後にMRI、CTを撮像した子宮頸癌(IIA-IIIB期)10症例を対象とした。腫瘍線量に関してはHR (high-risk)-CTV, IR (intermediate-risk)-CTVにおけるD90,D100で評価し、OARに関してはD0.1cm3, D1cm3, D2cm3で評価した。CT、CTStd(CTで輪郭を描きMRI融合画像で確認)、MRIのそれぞれでの輪郭描出において比較検討を行った。
結果
CTによる腫瘍の大きさ、厚み、容積の測定に関しては、MRIの場合と比べ明らかな有意差は認められなかった。一方、HR-CTV CTStd (high-risk CTV; GTV+entire cervix)とIR-CTV CTStd (intermediate-risk CTV; tumor extensionもしくはHR-CTV+1cm margin )においては幅、厚みとも有意に大きく同定されていた。HR-CTV CTStdにおいて、D90, D100, V100それぞれがMRIでの場合と比較して有意に低値であった。
またIR-CTV CTStdにおいても、D90と D100の検討で同様の結果が得られた。OARに関するD0.1cm3, D1cm3, D2cm3についてのDVH解析では、MRIとCTの場合でほぼ同等の結果が得られた。
結論
子宮腔内照射においてCTもしくはMRIを基にした治療計画は、OARのDVH解析においては適切である。しかしCTによる腫瘍の輪郭描出はMRIを用いた場合と比べ、腫瘍径を過大評価している(有意差あり)。その結果、D90, D100, HR-CTVに対する処方線量(<)で治療された容積において差異が認められる。CTVの同定に関してはいぜんMRIが標準と考えられる。
コメント
国内において子宮頸部癌に対する腔内照射は標準治療が確立し、良好な治療成績が得られているが、個々の腫瘍病変に対する詳細な対応は不十分である(断層画像が治療計画に用いられていない点において)。近年、ウイーン大学を中心にGEC-ESTROではImage-based brachytherapy(IBBT)への移行が試みられ始めている。
MRIを用いた標的の同定(GTV, PTV)においてGEC-ESTROでは推奨されるターゲットの定義を作成し、腫瘍の形状に合わせた線量分布による治療を試みはじめている。従来のA点線量でではなく、GTV, HR-CTV, IR-CTVに対する推奨投与線量を報告している。
ただし欧州とわが国では治療スケジュールや使用するアプリケーターが異なり、単純な比較は難しく彼らの推奨線量はそのままでは当てはまらない。また腔内照射時に毎回MRIを撮像する困難さも問題である。
本論文でもCTでの比較検討がなされているが、やはり現時点ではGTV, CTVの同定に関してはMRIでの場合に比べ不十分かもしれないが、OARの評価は十分可能であると考えられる。先の小線源部会(倉敷)においてもワークシップでもIBBTがテーマとして取り上げられた。国内でも数施設でCTを用いた線量評価の報告が見られ始めており、今後IBBTに関する検討が望まれる。
(高橋 健夫)